過疎化地域にある診療所や、在宅医療、夜間診療など、利用者にとっては必要不可欠な存在である医療サービス。一方で、国内の約半数の病院が「赤字」に陥っていると、株式会社アリオンシステム代表取締役社長の山本篤憲氏はいいます。医療を「経営」の面からみた際の厳しすぎる現実と、解決に必要な要素について、DX化のプロとして市町村とも連携を図る山本氏が解説します。

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医療従事者の「使命」と「経営」のジレンマ

医師や看護師をはじめとする医療従事者は、1人でも多くの患者から病気やケガによる痛みや苦しみを取り除きたいという思いで日々働いています。コロナ禍における医療現場の人々の献身的な奮闘には、多くの人々が感謝の思いを新たにしました。

 

生命を守るという人間にとってもっとも根源的な仕事が医療です。

 

標準化された医療が全国どこでも同じ料金で受けられるという世界でもまれに見る優れた医療制度のもと、通いなれた病院がいつも身近にあり続けてくれることの恩恵は計り知れません。

 

医は仁術であり、金儲けよりもまずは人助け、これは間違いないことです。

 

ただ、よりよい医療の提供が第一とはいえ、採算を度外視してただひたすら人助けに邁進するというわけにもいかないのが病院経営の難しいところです。

 

2021年の夏には、大阪の中核病院でコロナ患者を積極的に受け入れてきた中核病院が外来患者の減少により、もともと逼迫していた財政が破綻し、倒産したニュースが医療業界では注目されました。

 

それまでは赤字経営でもどうにかもっていたところをコロナ禍に見舞われ、ギリギリのバランスが崩れてついに沈没せざるを得なくなってしまったのです。

貪欲になるべき「事業としての医療」

実際、病院が健康インフラという社会的重責を担い続けていられるのは、赤字があってもなんとかやりくりしながら病院経営が継続されてきたおかげです。

 

もし補助金額が減るなどしてお金が滞ったり底をついたりするようなことがあれば、この病院のように一気に倒産に追い込まれてしまう可能性は決してゼロではありません。

 

なんとか病床だけでも残そうとするならば、その病院は再編・統合、あるいはM&Aの対象となり、別の病院の名を冠することを受け入れるしかありません。

 

そうなれば、病院経営者は、〝地域住民の健康を守る〟という志を諦めなければなりません。もちろん、いざというときに相談できる医療機関が地域内から失われることは、患者にとっても大きな損失です。

 

人口減に歯止めがかからず社会状況の変化も激しい現代だからこそ、規模の大小を問わず医療機関の経営者は、事業としての医療の継続に貪欲になる必要があるのではないかと思います。その研鑽の積み重ねを通して、患者満足度の高い医療提供が可能になっていくからです。

 

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※本連載は、山本篤憲氏の著書『病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

山本 篤憲

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の病院の約4割は慢性的な赤字経営に苦しんでおり、高い人件費率がいちばんの原因になっています。その解決策として挙げられるのが、電子カルテの導入による業務効率化ですが、中小病院の約6割がいまだ導入に踏み切ることが…

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