(※写真はイメージです/PIXTA)

年間約7,000万円のコストカットに成功した病院も存在するなど、大幅なコスト削減が期待できるカルテの電子化。一方で、電子カルテを導入している日本の中小病院はわずか4割程度と、株式会社アリオンシステム代表取締役社長の山本篤憲氏はいいます。電子カルテが普及していないさまざまな原因のなかでも特に深刻な3つに絞り、医療業務効率化に詳しい山本氏が解説します。

どうして「電子カルテの導入」が一向に進まないのか

紙カルテを電子カルテに変えることは、病院経営上、大きなコスト削減につながります。しかし、これほどのコスト削減効果が実証されているにもかかわらず、いまだに200床規模の中小病院では、全国で4割程度しか導入されていないといわれています。その理由は大きく分けて3つあります。

 

理由1:導入に莫大な経費がかかる

電子カルテを入れること自体、巨額の費用がかかります。200~300床の病院に電子カルテを導入する場合、ざっと見積もって電子カルテ単体で3億円前後の投資が必要になるといわれています。

 

電子カルテはそれだけを導入できるものでもありません。専用端末を新たに購入したり、データを保存するサーバー室を院内に設置するために不要物の廃棄や整理を行う必要があったりします。そのため、年間の保守費用だけでも3,000~4,000万円ほどの経費がかかるとされています。

 

更新時にかかる費用もまた課題の一つです。設置型の電子カルテは一般的に、5年おきに契約更新のタイミングが訪れます。365日24時間フル稼働しているハードウェアは耐用年数に応じた更新が必要で、メーカーによる保守作業や5年間蓄積してきたデータを新しいサーバーに移行する作業にも、当然かなりのコストが発生します。

 

このようなサーバー入れ替えやデータ移行には一定以上の時間がかかり、その作業に対し、電子カルテシステムの業者は、導入にかかった費用の7~8掛けの費用を求めることが一般的です。こうした更新条件を知り「更新の度に3億が飛ぶのか」と、導入を見送る院長・理事長も少なくありません。

 

理由2:病院内に「分かる人」がいない

電子カルテを導入する場合サーバー室を院内に設置しなければならず、電子カルテから入力するすべての患者情報などは、このサーバーに保存されていきます。つまり緊急時を除いては、この大切なサーバーの管理・維持は病院の職員が行わなければならない、ということです。そのためには、ある程度のITに関する知識・スキルが必要です。

 

これを聞いて、「うちの病院スタッフでは、とてもそんな管理はできない」と二の足を踏むケースもよく見られます。導入業者に人を回してもらうこともできますが、それはそれでコストがかさむことに直結します。

 

※本連載は、山本篤憲氏の著書『病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

病院を発展・黒字化させる 電子カルテイノベーション

山本 篤憲

幻冬舎メディアコンサルティング

日本の病院の約4割は慢性的な赤字経営に苦しんでおり、高い人件費率がいちばんの原因になっています。その解決策として挙げられるのが、電子カルテの導入による業務効率化ですが、中小病院の約6割がいまだ導入に踏み切ることが…

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