(※写真はイメージです/PIXTA)

これから開業する会社や個人事業主がまず当たるべき金融機関は、ズバリ「公庫」。数ある金融機関の中でも借りやすいこと、担保・無保証で利用できる創業融資制度があること、公庫から借入して事業を成功させれば、その後、民間の金融機関からも借りやすくなることなどのメリットがあるからです。事業を末永く継続していくカギを握るのは融資の実践、タイミングです。金融機関から「貸したい」と思われるためには、どうすればよいのでしょうか。

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借入履歴、預金残高が「将来の信用」につながる

金融機関が「融資したい」と思う条件は大きく4つあります。

 

一つ目に「自己資金、現預金を潤沢にもっている」、二つ目として「経験値が高いなど、事業を成功させる素養をもっている」ことが挙げられます。これら2つの条件を満たしていれば、「貸しても返してくれる可能性が高い」「貸し倒れリスクが低い」と判断されます。

 

三つ目が、「取引実績があること」です。会社を経営したことがない方は“会社に借金がある=マイナスイメージ”ととらえがちですが、むしろ逆と考えるべきでしょう。

 

多くの会社は「お金を借りる→投資する→利益を出す→積み増した現預金を元に再び融資を受ける」という繰り返しで業績を伸ばし、大企業へと成長していきます。つまり、「お金を借りる」ことは事業、会社を大きくしていくための通過儀礼であり、融資の成功は、会社が歩む成長プロセスにおける“テスト”にパスしたようなもの。「事業がしっかりしている」「きちんと利益を出している」、だから「さらなる成長に向けて融資を実践する」という社会的評価にもつながります。

 

よって、過去に融資を実践し、返済実績がある会社には「また貸したい」と、金融機関のほうから申し出があるケースも珍しくありません。私の会社でも、こうして取引実績を積んできた経緯があります。言葉を変えれば、融資のハードルがいちばん高いのは最初の融資であり、最初さえパスすれば、その後の融資は比較的スムーズに運びやすいのです。

 

■一度「借入・返済実績」を積めば、他行からの借入もスムーズになる

四つ目が、ちょっとユニークなのですが「他行に評価されている」ことが挙げられます。「他行がすでに融資をしている」「他行も貸したがっている」「より良い条件を出している」といった借入実績・評価を擁すことで、別の金融機関でも稟議が通りやすくなるのです。条件面の交渉でも優位に働くことがあり、二行以上から調達することで、互いに監視の目をおくことができ、将来的には金利面で競わせるようなことも可能となります。

 

実際、私のお客さまでも、まだ一度も融資を受けたことがない会社が信用金庫へ500万円の融資の申請をしたところ、審査に落選。そこで、まずは公庫に融資の申請をサポートしたところ、同額の500万円の融資が通りました。

 

その半年後、前にNGだった信用金庫に再度、融資の申込みをしたところ、当初断られた500万円の融資に成功した事例があります。

 

別のお客さまでも、創業直後にメガバンクに1000万円の融資の申込みをしたところ、あえなく却下されましたが、公庫で1000万円の融資に成功した半年後、そのメガバンクからなんと3000万円の融資が確定した事例もあります。

 

後者のメガバンクの融資に成功したケースは、ほかの経営者からメガバンクの担当者の紹介を受けられたこと、業績が非常に好調だったことが幸いした事例です。何の紹介もなく創業1~2年でメガバンクの融資に成功するのはレアケースとはいえ、一度目の融資の審査にパスし、業績を上げ、きちんと返済していれば、信用金庫などでの二度目の審査については、よほどのことがない限りパスするはずです。

創業後は「公庫以外からも借り入れる」ことが重要

■公庫以外に融資の選択肢を増やし、預金残高を積み増す

また、創業前に公庫から融資を受け、その返済実績がまだない場合は、公庫から追加の融資はできません。融資額が入金され、支払を開始してから最低でも半年、原則1年間程度、公庫からは追加の融資はできないと考えておくほうがよいでしょう。

 

私の会社でも、公庫から受けた融資は、創業時に800万円、1期目の決算終了後に追加で1000万円。2年間で合計1800万円と当時の上限額に近い額まで融資を受けました(現在は2期目までは基本的に1000万円程度が上限です)。その後も2期目決算が好業績だったことが評価され、追加で2000万円の融資を受けることができました。ただし、その間、公庫以外に、ほかの2つの金融機関から合計550万円の融資を受けられたことが、資金と気持ちの余裕につながったと考えています。

 

創業から2年間というのは、会社を成長させるうえで、非常に大事かつデリケートな時期です。想定以上に売上が停滞するケースもあれば、予想以上に売上が伸びたことで、仕入れや人件費がかさむこともあります。取引先の関係で、売掛金の回収が半年先に遅れ、帳簿上は黒字で潤っていても、社員に給与が払えないような窮地に陥ることもあり得ます。

 

こうした万が一に備える意味でも、公庫以外に融資先の選択肢を増やし、借入履歴、残高が蓄積していくことが大事なのです。

 

 

田原 広一

株式会社SoLabo 代表取締役

 

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※本連載は、田原広一氏の著書『賢い融資の受け方38の秘訣』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

増補改訂版 独立開業から事業を軌道に乗せるまで 賢い融資の受け方38の秘訣

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田原 広一

幻冬舎メディアコンサルティング

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