山本五十六の名言から学ぶ人材育成法
最終的な目標は、キーパーソンが自発的に考えて行動するレベルを上げることです。そのために大切なのは内発性であり、それが育成の核となります。内発性を高めるためには相手を無条件に信じ承認し、任せることです。これには相当の覚悟が必要です。
植物は種を植えても水の量や空気、温度、太陽の光などといった環境条件が整わないと発芽しません。ようやく発芽しても最初は弱々しい状態ですが、早く成長してほしいからとその芽を引っ張る人はいません。肥料を与えるなどして自発的に成長するのを見守り、支えることが必要になります。そうして立派に成長した植物は見事な花を咲かせます。
人の育成も同様で、環境条件を整えるのが経営者の最大の役目となります。育むのが経営者や幹部で、成長する主体はキーパーソンです。「成長させる」ではなく、自発的に成長するために必要なことを経営者が整えるのです。
元海軍の軍人だった山本五十六の、有名な教育4段階法があります。
「やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。」※注1
キーパーソンがだめになるのはこれらを経営者が一つも実行せず、挑戦もしなかったときです。キーパーソンに無関心で悩みを放置したり、マイクロマネジメントを行い続けたりすると、キーパーソンの内発性を徹底的にそぎ落として分解し、なかったものにしてしまいます。「建設は死闘、破壊は一瞬」と言われますが、まさにそのとおりです。
キーパーソンは育てるものであり、経営者に都合が良い方向にコントロールするものではありません。そもそも、自走型組織をつくるためのキーパーソンを経営者がコントロールしたのでは「自走」にならないのです。
キーパーソンを育てるには、その人の能力を発揮しやすい環境をつくることがいちばん効果的です。その環境が整えば、キーパーソンは自発的に自身のもてる能力をどんどん有効活用していきます。
キーパーソンは、現在の状態がすべてではありません。誰でも成長の可能性をもっていること、そしてその可能性は無限大であることを経営者が信じることが大切です。本人が限界を感じていても、経営者が信じ切ることで可能性の扉を開けることができるのです。
※注1『山本五十六のことば』稲川明雄
■キーパーソンとともに学ぶ
組織変革には「多様な全体を巻き込む」(ホールシステム・アプローチ)、「前向きに思考し、行動する」(ポジティブ・アプローチ)、「変化に柔軟に対応し続ける」(ジェネレイティブ・アプローチ)という3つの基本思想があります。このような基本的な組織理論をキーパーソンと一緒に経営者も学ぶことは、変革を進めるのにとても効果的です。
組織変革のためにチームをつくった時点では、それは厳密にはまだチームと呼べる状態ではありません。それはあくまでグループ、単なる人の集まりです。形成期、混乱期、統一期、機能期を経て、初めて「目標を共有したチーム」に進化します。このことを、キーパーソンと経営者が理解しておくことが大切です。
混乱期はチームのパフォーマンスが一時期落ちるように見えます。例えば、組織のトラブルが増えたり、売上が落ちたり、人や部門の対立が深まったりなどの問題が発生します。これは今までとは違うことをやっているから起こるのです。ここを抜けないとチームはまとまりません。
このポイントにさしかかったとき、経営者は「なにをやっているんだ。今までより悪くなってきたじゃないか。サボらずにちゃんとやれ」というのではなく「トラブルが増えたということは今までやらなかったことをやり始めたからであり、言われたことだけやるのではなく、自分たちで考えようとしている人が増えてきたということだな。ということは前に進んでいるので、しっかりとキーパーソンを支えてあげよう」と受け止めることが大切です。
また人員の構成や回し方はキーパーソンと相談をして、彼の意見と希望を可能な限り受け入れながら、どのようにすればキーパーソンが活動しやすいかを考えるのです。
特にキーパーソンには「投資」という意味で、人間力の向上に役立つコーチングなどを学ばせるとよいです。その投資はまちがいなく何十倍、何百倍になって戻ってきます。
森田 満昭
株式会社ミライズ創研 代表取締役
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