社員のやる気がないのには原因がある
■本当に社員だけが悪いのか?
組織変革は、社員と上司のどちらから始めてもかまいません。ただ役職が上がると頑固になることが多いので、上司が先に変わったほうが効率は良くなります。
私の経験では部下側を1歩進め、上司側を半歩進めるパターンが多くなります。一気に3歩進む日もありますし1ミリしか進まない日もありますが、両方を少しずつ動かしてわずかな変化を起こし、最後に地殻変動を起こすイメージです。重要なのは、社員側と上司側それぞれが視野を広げて自分自身を見られるようになることです。
経営者にヒアリングすると、ほとんどが「うちの社員はモチベーションが低くてなにも考えない」と嘆き、1時間も社員の悪口を聞かされることもあります。そこで「面接のときはどうでした? 最初から斜に構えて、相手の目を見ずに物を言う人でしたか?」と聞くと、「いや、面接のときは会社のために頑張ると元気に言っていたんだけれど」と言います。
このように社員のモチベーションが低くなってしまうのには、明確な理由が存在します。問題を抱える組織の社員は情熱が薄く、スキルや自発性が低いことがベースにあります。視野が狭く視座も低いので、抱えている課題を改善できず、そのステージにとどまっている状態なのです。自らそういう状態にとどまっていることを良しとしているのだと思います。
しかし実際に社員にヒアリングすると、さまざまな意見を聞きます。
まず、上司は相談を聞く努力を怠っていると言います。例えば社員が困ったとき、相談したくても声をかけにくい振る舞いをしていたり、小さな困り事には耳を貸さなかったりするそうです。また、社員から頼まれたことを解決せず後回しにしているといいます。そうかと思えば自分の意見や価値観を社員に押しつけ、彼らの意見や価値観を認めません。
社員一人ひとりの意見を聞くこともなければ、実現してくれることもあり得ないのです。その場合、なぜ要望が聞き届けられないのか事情説明はありません。社員の人材育成などはなくほったらかしですし、社員の頑張りも認めず褒めもせず、感謝もないといいます。
社員の幸福度が顧客の満足度に直結していることをまったく理解しておらず、会社を良くしようという意欲もありません。業務改善などは口先だけで、結局は社員に責任を押しつけてくるだけ……社員も上司に不満でいっぱいなのです。
こうした社員の不満をそのままにして「ミスをせず、言われたことをきちんとやって売上を上げろ」とだけ言い続け、「社員はちっとも言うことを聞かない。問題の原因と責任は100%社員にある」と文句を言う上司は少なくありません。「社員は上司の言うことを黙って実行すればいい」という固定観念があるからです。
「言ったことができていない」と叱るのは簡単ですが、心理的な安全性がないため社員は「これを聞いたら怒られるかもしれない」と、上司や経営者に相談できなくなります。これでは結果的にミスを起こします。ミスを起こしたら、「上司にばれたら怒られる」と考えて隠蔽が始まります。仲間同士で口裏を合わせ、さらに事実を上司に伝えない悪循環に陥るのです。
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この件数の多さは、すなわちその情報を求めている人の多さです。現場の不満解決=社員満足度向上に本気で取り組んでいない企業はもはや就職先として選ばれないのだと、経営者は気づくべきです。経営者が喉から手が出るほど欲しがっている優秀な人材は絶対にそんな企業には就職しないということを、真摯に受け止めなければなりません。
多くの経営者や幹部は社内のあらゆる問題について「社員が悪い」と考えます。確かに経営者や幹部から見れば考えは幼稚で真面目に仕事をしない、言ったこともやらないという社員は少なくありません。しかし、経営者や幹部が「やるべきことをやらないあいつらが悪い」という認識の枠組みに閉じこもっている間はなにも動かないのだということも知っておくべきです。
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