(※写真はイメージです/PIXTA)

機能していない企業の幹部には共通点があります。幹部ですから部下がいますが、自分の業務のみに意識が向き、自分の成果や成長、幸せのみを考えています。つまり、自分のことに精一杯なのです。経営者たちが抱える「組織変革」の悩みを組織改革コンサルタントの森田満昭氏が解説します。

花形社員が部下を育てられるとは限らない

昔は「夜討ち朝駆け」という言葉のように朝早く出かけ、休日返上して頑張ればそれなりの成果が出せました。現在幹部と言われている人たちに、育成された経験のある人はほぼいません。よく分からないまま社長の言うことを必死に聞いて、体育会系的、軍隊式に働きながら自分で階段を上ってきたのです。「俺なんか社長から褒められたこと、一度もないぞ」と自慢することさえありますが、それが成り立っていたのは業績が右肩上がりだったからです。

 

今はライバルを分析し、常に知識をアップデートして正しく行動しなければ一定の成果が出ないという複雑で難しい時代になっています。時代背景が変わっているのに、昔の成功体験が現代でも通じると考えているのが今のだめな幹部です。「俺はこうやってきた。だからおまえもこうしたら成功する。それをやらないのはおまえの怠慢だ。だからおまえが悪い」と言っているのです。その営業部長が、今年新卒で入社して、今までと同じ成果を上げられるかといったら無理だと思います。

 

また、幹部と経営者の関係も問題です。幹部が自分の売上さえ達成しておけば、部下がノルマを達成できなくても「頑張れと言っているんですが、部下にいくら言ってもだめですね」などと言っておけば、経営者は「何とかしろ」と叱ったとしても、最後は「じゃあ、しょうがないな」と諦めてくれます。実はここが経営者のいちばん甘いところです。

 

中小企業で幹部になるのは、ほとんどが自分で売上を上げる能力のある人です。しかし、自分が売上を上げることと部下を育成することは違う種類の能力です。売上を上げたから課長、部長になったとしても、部下を育てられるとは限りません。彼らは花形選手なので、部下の育成よりも自分が走って売上を上げるほうが、短期的な会社への貢献度は高いのです。

 

経営者もそれが分かっているので、幹部に「今月はクライアントとの間でいろいろと忙しくて部下との話ができていません」と言い訳されると大目に見てしまいます。こうして何年も本質的な問題がやり過ごされている、それが日本のほぼすべての中小企業における現状です。

 

昭和や平成の時代にもマネジメントの理論はありました。ハーバード・ビジネス・スクールでも、いかにライバルに打ち勝って会社を成長させ、売上を上げていくかを中心に議論されていました。しかし、この10年でその流れが変わってきています。社員のモチベーションをいかに上げるかなど、パフォーマンスマネジメントが経営学の中心になっているのです。

 

社員と上司、どちらが悪いのかを追求しても組織変革にはつながりません。上司側も正しいマネジメントを勉強する機会がなかっただけですから、これからは新しい知識をインプットして認知を変えるきっかけをつくり構造を変えていけばいいのです。

 

森田 満昭

株式会社ミライズ創研 代表取締役

 

 

※本連載は、森田満昭氏の著書『社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方

社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方

森田 満昭

幻冬舎メディアコンサルティング

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