(※写真はイメージです/PIXTA)

研修で行う「弔辞ワーク」は気づきの効果があります。今の自分のあり方と、そのメッセージをもらえる自分のあり方や生きざまに差があることが見えてくるのです。理想と現実のギャップを認識すると、参加者の多くは焦りを感じます。経営者たちが抱える「組織変革」の悩みを組織改革コンサルタントの森田満昭氏が解説します。

会社の問題を自分事に変える

■自分事になっていない研修

 

どの階層や立場であっても、成果を出すためには二つの要素が必要となります。一つはその目標を達成しようというやる気、もう一つは能力やスキルです。この二つはともに重要ですが、どちらが優先的かと言えば目標を達成しようというやる気です。その気持ちが十分に強ければ、自分の能力が足りない場合でも「学ぼう」「研修を受けよう」「チームの改革をしよう」という気持ちが起こります。

 

数多くの研修会社が日本中でさまざまな研修を行っていますが、その効果はたいてい限定的です。研修とは業務遂行能力を高めるため特別に学習することですが、そこで学んだことを持ち帰って実践する人はおそらくごくわずかです。

 

参加する社員は研修の時間を寝ずに過ごすことを目標としており、そんな時間があれば営業に行きたい、見積書を作りたい、商品を開発したいと思っている人が圧倒的に多いのです。学んで実践しようという気持ちがない人にいくら価値のある情報を伝えても効果がありません。研修会社が悪いわけではないのですが、研修の価値を感じられるマインドをつくってあげなければ、研修は活きてこないのです。

 

会社のために研修を受けろと言っても社員にとっては他人事ですので、その状態を変えないと研修の効果は低くなります。もし会社が「売上10億円の目標達成」というビジョンだけを掲げていたらこれは単なる会社の都合でしかないので、組織のメンバーのモチベーションは上がりません。その10億円を達成することと「海外旅行に行く」という個人ビジョンが強くつながると「だったら、もっと勉強しよう。もっと研修を受けたい」というマインドが起こります。そこまで行って初めて、研修が活きてくるのです。

 

幹部も同じです。私が組織変革コンサルタントとして企業の内部に入っていく場合、ゴールは「自分のビジョンを実現するには、会社を良くしていくこと」「良い会社に変えていくのは自分」という強い気持ちを幹部一人ひとりがもつことです。そのために、幹部にとって会社の問題が自分事になるように認識を変え、思考を深めることが必要になります。そこで課題と自分の個人ビジョンとを紐づけてもらうのですが、そこに至るには「知識を広げる」「探求する」「高める」という3つのプロセスが存在します。

ダメ幹部が生まれ変わる3つのプロセス

▶幹部が生まれ変わる3つのプロセス①知識を広げる

私が幹部育成の研修を担当する際「部下を育成し、組織を変革するために具体的になにをやったらいいと思いますか? 5分で3つ考えてください」と問題を出すことがよくありますが、多くの人は答えられません。知識がないと考えつかないことだからです。

 

ほとんどの幹部は人材育成の仕方を学校でも会社でも学んでいないので、まずは組織変革に関する知識を身につけてもらうことから始まります。

 

幹部の役割の一つは部下の育成であり、ゴールは「部下が成長すること」です。しかし、「明日からこれだけをやれば部下はすぐに成長しますよ」という魔法などはありません。

 

まず幹部が身につけるべきは、組織変革のプロセスと組織課題の本質的な構造についての知識です。人材育成の本質はなにか、部下を育成していくと組織にどう影響するのか、プロセスや構造についてレクチャーし「なるほど、取っ掛かりはこういうことか」と理解してもらうのです。それを踏まえて自社でできることを考えてもらうと、なにをどのように進めるのかを具体的に理解できるので、幹部はプロセスを想像しやすくなります。

 

▶幹部が生まれ変わる3つのプロセス②ビジョンを探求する

知識の次に必要なのは探求です。探求するのは自身や組織のあり方、共有ビジョンです。しかし、ほとんどの人は探求したことがありません。

 

人材育成に、アドバイスやフィードバックはほとんど無力です。自分で気づかなくては変化は起こらないので、まずは自分自身を深掘りしていきます。自分はなにに喜びを感じ、なにが嫌なのかを探求していくと「そうか、本当はこういうふうになりたかったのか」と初めて気づくのです。昔の職場であれば酒を飲みながら「おまえは本当はなにがしたいのか」と聞いたかもしれませんが、今はコーチングやワークショップのプロセスを経たほうがより深く理解できます。そうなれば気づくことも増えるので組織変革には重要です。

 

このようにプロセスが進んでいくと「会社がうまくいかないのは社長のせいと言い続けてきたけれど、それを言い訳にして頑張らないのは自分が人生で損をしているのではないか」という気づきが生まれ、幹部は自分たちのあり方に変化が必要だと感じます。そして部下たちはどう考えているのか、なにを望んでいるのか、組織のあり方に初めて意識が向きます。

 

そのためにも、やはり個々人のビジョンが重要になります。「俺の個人ビジョンはこれだ、会社の共有ビジョンはこれだ、だからここを実現させたい」と、ビジョンの実現にわくわくする状態をつくることが、幹部の育成におけるスタートになります。問題を自分事化するだけでビジョンの実現に近づけるのです。

 

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    ※本連載は、森田満昭氏の著書『社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    森田 満昭

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