妻と穏やかな年金暮らしを送る大川昭夫さんは、マイホームが欲しいけれど自分たちの貯金ではとても買えないと悩む娘の言葉を聞き、ひとつのアイディアを提案します。それが「二世帯住宅での同居」です。当初は自分たちも娘夫婦も満足をしていましたが、しばらくすると関係に思わぬ変化が。そして、それは最終的に取り返しのつかない事態を招くことに……。今回は大川さんの事例を通して、親子の同居や二世帯住宅購入を慎重にすべき理由などについて小川洋平FPがお伝えします。
こんな家買わなければよかった…。7,000万円で二世帯住宅を購入した68歳元会社員、幸せを噛みしめた3年後に娘夫婦と怒鳴り合いの大喧嘩→「地獄の同居生活」へ【CFPの助言】
メリットしかない…そう考えて7,000万円の二世帯住宅を購入
大川昭夫さん(68歳・仮名)は地方の大企業を退職した後、夫婦で年金生活を送っていました。総額で5,000万円の資産を保有し、公的年金も妻と合計し28万円程度。まさに絵に描いたような「悠々自適な老後」です。
大川さんの一人娘である博美さん(35歳・仮名)は、すでに結婚して子供が1人います。博美さんは子育てしながら扶養内のパートで働き、ほぼワンオペの育児をしながら生活していました。
大川さんの家から車で30分程度のところでアパート暮らしをしているため、博美さんは頻繁に実家に帰ってきては、子育てしながら働く大変さを母にこぼしていたのでした。
家族3人で暮らせるマイホームも欲しいけれど、博美さんの夫の隆さん(34歳)の年収は400万円ちょっと。自分も子育てをしながらのパート勤務で給料は少なく、とてもではないが買える余力はない……。
そんな娘の悩みを聞いた大川さんは、以前から頭の片隅で考えていたアイディアを博美さんに伝えます。それは、築40年近く経って古くなった自宅を二世帯住宅に建て替えるという提案でした。
大川さん夫婦と娘夫婦が一緒に暮らせば孫のサポートもしやすくなります。また、まだ68歳とはいえ自分も年を取ってきました。何かあったとき、娘やその夫が一緒だったら妻も安心だろうと考えてのことです。
博美さんも、いざとなればすぐに子供を預けることができるうえに新しく広い家に住めるとあって、この提案に即賛成します。夫の隆さんを説得し、二世帯住宅の購入が決まりました。
二世帯住宅は2階建てで、玄関は一緒ですが上下の階で生活を分けることができるようになっており、延べ60坪以上もある大きな家です。総額は7,000万円ほどで、そのうち4,000万円を大川さんが頭金として出し、残りの3,000万円をローンで博美さん夫婦が支払っていくことにしたのでした。
この時点では、どちらの家族にとってもこの住宅購入にはメリットしかない、そう思っていました。