(※写真はイメージです/PIXTA)

3人のレンガ職人の話があります。同じ仕事をしていても一人ひとりの働く意識は違います。目的を持つか持たないかで、働く意識が変わり、その人の人生が大きく変わります。経営者たちが抱える悩みを組織改革コンサルタントの森田満昭氏が解説します。

 

自走型組織を支える“自律型”社員

自走型組織を支えるのは自立型社員・自律型社員です。自立型社員・自律型社員は、上から期待されていることを自身のビジョンとすり合わせ、仕事をする意味と意義を自分のなかにしっかりと落とし込みます。また自分のスキルが不足していると思えば、意欲的にスキルアップに取り組みます。

 

スキルアップの目標を達成したいと自発的に考えた結果として情熱、モチベーションが生まれるのです。自立型社員・自律型社員には、内面から湧いてくる「やりたい」という自発性と、その源の「情熱」があるのです。

 

同じ仕事をしていても、一人ひとりの解釈は違います。例えばレンガ職人が忙しく働く工事現場で、レンガ積み職人に「あなたはなにをしているのですか」と尋ねたとします。1人目の職人は「私は給料が安いのにレンガを運ばされています。ああ、しんどい」と、2人目の職人は「私は塀を作っています」と答えました。そして3人目の職人は「みんなが祈りを捧げるための大聖堂を建てています」と言いました。

 

これらの回答から、最もモチベーションが高く仕事に対して情熱をもっているのは3人目の職人だと分かります。「自分がやっていることはレンガ積みだが、やがてすばらしい大聖堂ができ、みんなが喜んで祈りに来てくれるのだ」と、自分の仕事の意味を理解しているからです。

 

このような業務に対する意味付けは、誰かが伝えることはできても、仕事をしている本人が「そうなんだ」と腹落ちしなければ意味がありません。業務に従事する一人ひとりが仕事の意味を理解し、「業務自体は無味乾燥で面白くないかもしれないけれど、その先にあるビジョンに共感するから頑張れる」と考えられる状態をリーダーがつくる必要があります。

自走型組織と対極?管理型組織の問題点

自走型組織の対極にあるのが管理型組織です。管理型組織では、経営者や上司が業務の細かいところまで管理するマイクロマネジメントを行うのですが、この方法にはデメリットがあります。いつも忙しい経営者やマネージャーは、高度な経営判断や意思決定に割く時間がなくなるのです。VUCA時代の今、マイクロマネジメントを続けると現実への対応が困難になります。

 

実際、管理型組織の多くは回らなくなったPDCAサイクルにしがみつき、社員には隷属と服従を強いています。社員は我慢とあきらめの人生になり、やる気も情熱も生まれません。このような状態で多くの人が働きやすく、かつ働きがいのある職場をつくることは困難です。そのままでは組織の社会的な存在価値は低下し、存続さえ危ぶまれます。トップダウンでの経営は限界に来ているのです。

 

経営者が「右向け右」と言えばみんなが右を向くような組織を文鎮型組織と言います。もし経営者が文鎮型組織を目指すのであれば、私はなにも言うことはありません。

 

しかし、経営者がすべてを一人で考えて、社員に「あれをやりなさい」「次はこれをやりなさい」「あなた方の次の目標はこれです」と指示を出すのは、社員の自発性をスポイルしていくことにつながります。このやり方を続ける限り、社員は「社長、次はなにをすればいいですか」「次はどこまでやればいいですか」と必ず聞くようになり、自発性とは真逆の状態になるのです。

 

経営には事業と組織、それぞれにおける課題があります。多くの経営者は会社経営に対して「真剣」「命懸け」というフレーズをしばしば使いますが、その場合「売上を上げるために」という目的があります。しかし売上をつくるのは組織であり、組織を構成する社員です。そのため経営者は、組織の課題や人材育成に対しても、売上と同様に、命懸けでエネルギーを使うべきなのです。

 

もはや自走型組織のメリットとデメリットを考えてどちらを選ぶかという問題ではありません。組織の成長または存続のために、いつから組織変革を始めるのか真剣に考えなければいけない時代になったのです。

 

森田 満昭

株式会社ミライズ創研 代表取締役

 

※本連載は、森田満昭氏の著書『社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方

社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方

森田 満昭

幻冬舎メディアコンサルティング

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