(※写真はイメージです/PIXTA)

多くの経営者にとって自分が細かく指示しなくても、社員が主体的に行動し事業を進めていく「自走型組織」となることが理想です。しかし、多くの企業が人材育成や組織改革に関心はあるものの、その難しさから取り組めていないのが現状です。主体性のある社員を育てるためにはどうすればいいのでしょうか。経営者が抱える悩みを組織改革コンサルタントの森田満昭氏が解説します。

「組織改革や人材育成」は経営者共通の悩み

収益と人材育成は、企業の存続に欠かせない課題です。2021年の一般社団法人日本能率協会の調査によると、当面する経営課題の第1位が「収益性向上」(40.8%)、第2位が「人材の強化(採用・育成・多様化への対応)」(37.7%)で、前年より6ポイント以上増加しています。そして、3年後の課題の第1位は「人材の強化」(36.9%)で圧倒的に大きな比率になっています。

 

「働きがい・従業員満足度・エンゲージメントの向上」(17.0%)も年々増加し、7位になっています。この資料が興味深い点は「人材の強化」の項目が「3年後の課題」では第1位に挙げられているのに対して、「現在の課題」となると順位が2番目に下がっていることです。

 

この傾向は2020年の資料を見ても同様であり、これは企業が「問題先送り」をしているというよりは、人材育成や組織変革への具体的な取り組みがいかに難しいかを示していると読み取ることができそうです。

 

中小企業白書でも、規模や業種を問わず直面する経営課題は「人材」と「営業・販路開拓」であるとの回答が6割超でした。特に、中規模企業の非製造業においては、「人材」との回答が8割を超えています。

 

この結果から分かるように多くの経営者が「人材を強化し組織のあり方を変えることで、売上拡大につながる」と考えています。しかし、売上拡大を目的とした人材育成・組織変革は必ずしもうまくいくわけではありません。経営者主導でさまざまな組織変革をしたものの売上が上がらないか、上がったとしても離職率が高くなるなど、思ったような結果に至らない企業が多いのです。経営者一人で頑張るには限界があるため、相談できる人が必要です。

 

しかし、人材育成や組織変革の知識が豊富な相談相手が周囲にいるとは限りません。中小企業白書によれば、人材の課題について、企業のリーダーたちは「期待する相談相手がいない・分からない」と答えています。

 

私は2012年から組織変革コンサルタントとして製造業や販売業、サービス業などの中小企業、また東証一部上場企業、900人のスタッフを抱える急性期病院まで、約25社の企業を支援してきました。

 

支援にあたり、私はまず組織のトップの悩みを聞くことから始めます。特に中小企業の経営者の悩みはほとんど共通しています。それは「社員は言われたことしかやらない」「指示待ち社員ばかり」ということです。

 

経営者のなかには社員の一部をお荷物と感じることさえある、という人もいます。何度教えても同じ失敗を繰り返す社員や最低限必要な業務上のコミュニケーションさえも取らないという社員を抱え、彼らがいったいなにを考えているのかよく分からなくなっているのです。そうした社員の離職率は高く、同業他社に転職することもしばしばあります。また、最初はやる気があるように見えた人材が、いつの間にか周りの社員と同じようにやる気がなくなっていることも多いのです。

 

長年働いている幹部でも「会議で意見を言うのはいつも同じ一部の人間だけ」「他部署の責任ばかりを追及し、足の引っ張り合いをしている」「会議で決めたことを実行しない」というケースはあります。つまり自発性がなく、言われたことしかやらないどころか、言われたことさえやらないのです。

 

機能不全に陥った企業の経営者やリーダーは誰にも悩みを打ち明けられず、組織のなかでますます孤立感を深めていきます。私が経営者の話を聞き始めると数日かかることもあり、いかに彼らの悩みが深いかということが分かります。

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    ※本連載は、森田満昭氏の著書『社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

    社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方

    社員が自ら考え、動く自走型組織の作り方

    森田 満昭

    幻冬舎メディアコンサルティング

    売上の拡大、コスト削減、新規事業の創出…「自走型組織」が会社の未来を切り拓く! 組織変革のプロが教える自走型組織の作り方とは──。 自走型組織とは、社員が自ら考え、動く組織のことを指します。多くの経営者にとって…

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