(写真はイメージです/PIXTA)

賃貸物件の「原状回復義務」をご存じでしょうか? 借りたものを元の状態に戻して返却する義務を指しますが、どこまでを入居者に負担させることができるのかといった点で問題となるケースが後を絶ちません。本記事では、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士がケース別に、誰に回復義務があるのか、またトラブルを予防する方法はあるのか、解説していきます。

ガイドラインに沿った契約内容とする

賃貸借契約書に記載された原状回復義務の範囲が国土交通省のガイドラインと大きく乖離している場合には、入居者が支払いを拒むなどしてトラブルに発展する可能性が高くなります。

 

あらかじめガイドラインをよく確認したうえで、ガイドラインに沿った内容で契約をしておくと良いでしょう。

 

あらかじめ弁護士に契約内容を確認してもらう

賃貸借契約書にはひな形も存在していますが、ひな形をそのまま利用した場合には、実情にそぐわない内容となってしまう可能性があります。また、大家さん自身が契約内容をよく理解していないケースも少なくありません。そのため、賃貸借契約を結ぶ前に弁護士に契約内容を確認してもらうことをおすすめします。

 

そのうえで、内容の理解が不安であれば、契約内容について弁護士に内容をかみ砕いて説明してもらっておくと良いでしょう。

 

契約内容を入居者によく説明する

原状回復義務に関することを含め、入居者によく契約内容を説明しておくことも重要です。

 

入居者からそのようなことは聞いていないなどと主張されてトラブルになることを避けるため、場合によっては契約書とは別でチェックシートなどを設けて、契約内容を理解したことについての署名をもらっておくことも一つの手でしょう。

 

ただし、上で記載をしたとおり、いくら入念に説明をしたからといってそれだけで一般消費者に不利となる契約条項が有効となるわけではないことには注意してください。

 

入居時の状態を写真に撮っておく

入居者に物件を賃貸する直前に、物件の全体をつぶさに撮影しておくことも、トラブル予防につながります。なぜなら、大家さんとしては明らかに入居者がつけた傷だと考えていても、入居者に入居前からついていた傷だなどと主張されてしまえば、平行線となりかねないためです。

 

入居者立ち合いのもとで室内などの撮影をおこない、契約書と一緒に保管をしておくと良いでしょう。

 


不動産の原状回復に関するトラブルは、後を絶ちません。

 

しかし、原状回復トラブルとしては、大家さん側が本来入居者に請求できない通常損耗についてまで入居者に負担させようとしたことによるものも少なくないのが現状です。

 

一方的に入居者に不利となる契約を締結させたり、ガイドライン以上の損耗についての原状回復を請求したりすればトラブルに発展する可能性が高いといえます。無用なトラブルを避けるため、ガイドラインに沿った運用をするよう注意しましょう。

 

 

 

森田 雅也

Authense法律事務所 弁護士

 

 

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本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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