(写真はイメージです/PIXTA)

高齢化が進む近年、高齢者の一人暮らしは決して珍しいことではなく、「孤独死」という言葉が広く取り上げられるようになりました。孤独死により、物件内に遺体が放置された場合、悪臭や汚れが室内に充満し、改修工事が必要となる事態も想定されます。では、賃貸物件のなかで入居者が死亡した場合、オーナーは遺族にその責任を追及することはできるのでしょうか? 本記事では、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が、賃貸物件内で入居者が死亡した場合の対応方法について解説します。

入居者が死亡…亡くなっていても責任追及はできるのか?

賃貸借契約において入居者は、「善良なる管理者の注意義務(善管注意義務)」を負っており、適切な注意をもって賃貸物件を利用しなければなりません。では、入居者が物件内で亡くなった場合には、その義務に違反したといえるのでしょうか。

 

入居者が「自然死」した判例

東京地裁昭和58年6月27日判決は、賃貸物件内での自然死について、入居者に善管注意義務の違反を認めることはできないと判断しています。なぜなら、自然死においては、入居者が自らの意思によってその部屋で亡くなることを選択したわけでも、自らの死を具体的に予測できたわけでもないからです。

 

もっとも、自然死によるご遺体が賃貸物件内で放置されて腐敗が進み、建物に汚損や悪臭が生じているにもかかわらず、入居者に対して修理費用や工事期間の家賃すら請求できないというのでは、家主さんがあまりにも重い負担を負うことになります。

 

そこで、さきほどの裁判例では、入居者は、賃貸借契約が終了する際に、部屋を借りたときの状態に戻して家主さんに返す義務の一環として、部屋に生じた汚損や悪臭を回復する措置を講じる必要があると認めました。

 

そのうえで、壁紙の張替えや交換にかかった改修工事の費用、悪臭が消えるまでその部屋を貸すことができなかった期間の賃料に当たる金額を、家主さんに生じた損害として認め、入居者の保証人に対して、その支払いを命じたのです。

 

なお、賃貸物件内での入居者の死亡といっても、その原因や具体的な状況によって、損害賠償が認められるかどうかや、認められる損害額がいくらかということは変わってきます。お困りの方は弁護士にご相談いただくことをおすすめします。

 

また、入居者が賃貸物件で亡くなってしまう例には自殺も挙げられます。自殺の場合には、先述した自然死とは異なり、入居者が自らの意思で賃借物件にキズをつけてしまうものといえます。そのため、入居者が適切な注意をもって賃貸物件を利用する義務に違反したとして、入居者の相続人や保証人に一定の損害賠償を求めることができる場合があります。

 

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