飲食店が入る雑居ビルで放火、約50名が死傷…賃貸する不動産での予期せぬトラブル、「オーナー」の責任範囲は?【弁護士が解説】

飲食店が入る雑居ビルで放火、約50名が死傷…賃貸する不動産での予期せぬトラブル、「オーナー」の責任範囲は?【弁護士が解説】
(写真はイメージです/PIXTA)

賃貸借契約は、賃料を対価として、不動産オーナーが入居者に建物や部屋を使用・収益させる契約です。不動産オーナーは、契約に定められた目的に沿って入居者が建物を使用したり利益を上げたりできるよう、建物を管理すべき義務を負っていると考えられます。では、賃貸ビル内で予期せぬトラブルが発生した場合、どこまで責任を負うべきなのでしょうか? 本記事では、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が、不動産オーナーの管理義務の範囲について解説します。

賃貸していた店舗がピッキング被害に!オーナーの責任は?

まず、店舗を経営する業者にビルの一室を賃貸していた場合を考えてみます。

 

その店舗がピッキングの被害に遭ったとしたら、オーナーはなんらかの責任を負うのでしょうか。

 

また、店舗を経営するためにビルの一角を賃貸した場合、オーナーは、入居者が店舗を安心して営業できるよう、ビルを管理する義務を負っていますが、その管理義務の範囲に「ピッキングの被害を防止する義務」が含まれるのでしょうか。

 

この問題に関し、裁判例は、原則として防犯の責任は入居者自らが負うべきであり、オーナーには責任がないが、特約や信義則上の付随義務としてオーナーの責任が生じる場合もあると判断しています(東京地裁平成14年8月26日判決)。

 

この裁判例では、

 

1.オーナーと入居者との間で貸室の防犯について特段の合意がないこと

2.契約上、盗難による被害はオーナーの免責の対象とされていること

3.事務所入口はダブルロックであり、一応の防犯効果が期待できたこと

 

等の事情が認められることから、オーナーは、管理義務としてピッキング被害防止策を講じたり、過去のピッキング被害を報告する義務を負わないとしました。

入居時点ですでに入口が故障していた場合

別の裁判で問題となった建物は、入口の鉄扉が故障したまま常時開放され、容易に誰かがが建物内に侵入できる構造でした。

 

ただし、入居者が建物に入居したときにはすでに入口の鉄扉は常時開放されており、そのことを前提として建物の警備システムが検討されていました。

 

ここで裁判所は、入居者は入口の鉄扉の状態を認識して入居したのであるから、鉄扉が常時開放されていることが、オーナーの債務不履行とはならないと判断しました。

 

また、賃貸物件に入居者が操作するカードキーなどの警備機器が設置されている場合、オーナーは当該機器の使用方法について説明義務を負うとしましたが、オーナーは当該機器の使用方法を説明する義務を尽くしていると判断し、オーナーの管理責任を認めませんでした(東京地裁平成11年7月8日判決)。

 

上記で見てきたように、裁判所は、オーナーに建物を管理する責任があると当然に認めているわけではなく、賃貸建物の規模や賃料、賃借目的などの契約内容、防犯についての賃貸借契約の特約等によって、オーナーの管理責任の有無を判断しているのです。

 

とはいえ、オーナーがドアや窓の破損をそのまま放置し、それを補う警備体制をなんらとっていなかったような場合には、オーナーの義務違反が認められる場合もありえます。

 

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