(写真はイメージです/PIXTA)

賃貸物件の「原状回復義務」をご存じでしょうか? 借りたものを元の状態に戻して返却する義務を指しますが、どこまでを入居者に負担させることができるのかといった点で問題となるケースが後を絶ちません。本記事では、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士がケース別に、誰に回復義務があるのか、またトラブルを予防する方法はあるのか、解説していきます。

入居者が「原状回復費用」を支払わない場合の対処法

原状回復費用について、敷金が差し入れられていた場合には、原状回復費用を敷金から差し引くことが可能です。そのため、原状回復費用が敷金を上回らなければ、原状回復費用を敷金から差し委引いた金額を入居者に返還することで、原状回復費用を回収することができます。

 

しかし、原状回復費用が敷金を上回ってしまった場合には、退去した入居者に対して、その上回った額を請求してゆくことになります。

 

しかし、退去した入居者が負担すべき原状回復費用を支払わないケースもあり、トラブルに発展することがあります。このような場合には、次のように対処します。

 

内容証明郵便で請求する

通常の郵便や電話などで請求しても支払うべき原状回復費用を支払ってくれない場合には、内容証明郵便で請求をします。内容証明郵便とは、送付した文書の内容と送付日が証明される郵便で、のちに訴訟となった際、訴訟に先立って請求したことの証拠となります。

 

心理的にプレッシャーを与えることで、自発的な支払いを促す効果も期待できます。

 

ただし、内容証明郵便はその内容も証拠として残るため、記載した内容によってはむしろ自分にとって不利となってしまう可能性も否定できません。そのため、できる限り内容証明郵便を送る段階から弁護士へ相談すると良いでしょう。

 

弁護士へ相談する

内容証明郵便を送ってもやはり期限までに支払いがない場合には、すみやかに弁護士へ相談することをおすすめします。請求している原状回復の内容を精査したうえで、弁護士から改めて請求をしたり、少額訴訟などの準備をしたりします。

 

弁護士から請求をすることで、支払ってくれる場合もあります。

 

調停・訴訟を提起する

弁護士から請求をしても支払ってくれない場合には、原状回復費用支払を求めて調停を申し立て、又は、訴訟を提起することになります。調停は、調停委員という第三者を間に入れ、話し合いによる解決を目指す手続きで、合意に至った場合には強制執行をすることも可能です。

 

調停による解決が難しいと考えた場合には、訴訟を提起することも可能です。いずれの手続きを選択すべきかは、相手方の態度や請求が認められる可能性等を考慮して判断することになります。

原状回復に関するトラブル…予防策はあるのか?

原状回復についてトラブルになってしまえば、最終的に解決ができたとしても、多大な労力を要することとなります。そのため、可能な限り事前にトラブルの予防策を練っておくと良いでしょう。

 

具体的な予防策としては、次のものが考えられます。

次ページ原状回復に関するトラブル予防策4つ

本記事はAuthense不動産法務のブログ・コラムを転載したものです。

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