(写真はイメージです/PIXTA)

駐車場経営をしていると、無断駐車などの不法行為に巻き込まれる可能性もあります。こうした場合には、駐車場のオーナーとしての適切な対処が求められます。では、もし経営する駐車場に無断駐車をされたらどうすればよいのでしょうか? 本記事では、駐車場経営におけるトラブルとその対処法について、不動産法務に詳しいAuthense法律事務所の森田雅也弁護士が解説します。

借主を保護する「借地借家法」

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自分の所有する土地を有効活用するために貸し出す場合、留意しなければならないのはどのような点でしょうか? これを考えるうえでは、借地借家法が適用されるかどうかによる違いをまず理解しておく必要があります。

 

借地借家法は、貸主よりも立場の弱い借主側を守るための法律で、建物の所有を目的とする土地の賃貸借に適用されます(借地借家法1条)。「建物の所有を目的」とは、典型的な例として「借りた土地に住居を建築し、自分で住む」というようなケースを指します。

 

このような、建物の所有を目的とする土地の賃貸借契約では、借地借家法が適用されることで借主が厚く保護され、貸主側から一方的に契約を解除することができません。賃貸借契約の期間満了の際に、借主が契約の更新を請求すれば、土地上に建物がある場合には前の契約と同一の条件で契約を更新したものとされるのです(同法5条1項本文)。

 

貸主は、借主からの更新請求に対して異議申し立てをすることはできますが(同条項但書)、その場合にも「どうしてもその土地を使用しなければならない事情が発生した」などの正当事由が必要です(同法6条)。

 

「駐車場」にも借地借家法は適用される?

では、駐車場にするための土地の賃貸借契約の場合はどうなるのでしょうか? 結論からいうと、駐車場として貸し出す土地は建物の所有を目的とするものではありませんから、借地借家法は適用されません

 

そのため、契約期間が満了すると土地の賃貸借契約は終了し、借主は土地を明け渡さなければなりません。借主が契約を更新したいと請求してきても、貸主は拒絶することができるのです。

 

(写真はイメージです/PIXTA)
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ただし、駐車場として使用するために貸し出した土地に、知らないあいだに借主が建物を建ててしまう可能性もゼロではありません。借主が勝手に建てた建物を貸主が見逃し、長期間放置してしまえば、借主が借地借家法の保護を受けられるようになってしまう可能性もあります。

 

事前にトラブルを避けるためにも、契約締結の際、契約書に契約の目的として「自動車駐車場として使用する」という旨を明記しておくとともに、もし借主が勝手に建物を建てたような場合には直ちに異議を述べるのがよいでしょう。

駐車場利用されている土地を購入した場合

契約期間の満了前に賃借人を立ち退かせることは可能?

ここまで、自身が所有している土地を駐車場として貸し出す場面を想定して解説してきました。 しかし、土地の活用には「すでに駐車場として使用されている土地を買い取り、駐車場以外の用途に使いたい」というケースもあるかと思います。

 

それでは、駐車場として賃貸されている土地を買い受けた場合、買主は、契約期間が満了する前でも借主(=駐車場の利用者)を立ち退かせることができるのでしょうか。

 

ここで、2020年に施行された改正民法の条文をみてみましょう。改正民法605条の2第1項では、「借地借家法第10条又は第31条その他法令の規定による賃貸借の対抗要件を備えた場合において、その不動産が譲渡されたときは、その不動産の賃貸人の地位は、その譲受人に移転する」と判例の立場が明文化されました。

 

他方で、譲渡人と譲受人とのあいだで、賃貸人の地位の移転を譲渡人に留保する旨の合意がある場合などには、例外的に、賃貸人の地位は移転しないとされています(改正民法605条の2第2項前段)。

 

先に説明したとおり、駐車場契約は土地を駐車場として使用させるものであり、建物使用目的の土地賃貸借契約ではありません。よって、駐車場契約には借地借家法の適用はなく、駐車場として利用している土地についての賃借権登記がなければ、駐車場の貸主としての地位は、駐車場の土地を譲り受けた第三者には移転しません。

 

したがって、駐車場の土地について賃借権の登記がある場合を除いて、借主は、土地を買い取った譲受人に対して自己の賃借権を主張することができません。このような場合、土地の買主は駐車場利用者に対し、原則として、土地の明渡請求によって立ち退かせることができます。

 

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