(※写真はイメージです/PIXTA)

ビジョンを示すことがそんなに重要なのかと思う人もいるかもしれません。社員のみならず、社外の利害関係者や社会に向かってビジョンを示すメリットは計りしれません。それはなぜでしょうか。著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)で解説します。

長期ビジョンと中期計画で時間軸のバランスを取る

事業計画には、短期のものと中期、そして長期という3通りがあります。短期は通常1年間を指し、年度予算等の形で扱われます。中期は3〜5年で中期経営計画や中期事業計画等と呼ばれます。長期は5年以上で、最長30年位先までありえます。

 

よく「先を見た経営が必要」とか、「経営には先見性が必要」と言われますが、このVUCAの時代、どれくらい先読みできるか定かではありませんが、先のことを考えた経営が必要なことは言うまでもないでしょう。

 

では、短期、中期、長期のうち、どのあたりまで先を考えた経営を行ったらいいのでしょうか? よく1年先がどうなるか分らないのに、中期経営計画は立てられないとか、10年先の事など見当がつかない等と言われます。

 

前に見たように、私たち人間は現状延長型で物事を捉えようとし、環境変化を予測しようとします。ただ経営計画・事業計画は予想・予測という側面と目標という側面とをあわせ持っています。短期、中期、長期ではこの予想・予測と目標の割合が異なると捉えた方が良いでしょう。

 

短期の1年は、予想・予測の割合が一般に7割〜8割ぐらいを占めます。「今期見通し」と呼んだりするのは、この予想・予測の割合が高いことを示しています。ただ短期でも、今年度はこれこれのことをやろうと一定程度の目標を折り込んでいますから、目標の割合も少しあります。

 

一方3〜5年の中期では、予想・予測の割合が減り、目標の割合が高くなってきます。将来見通しがつかなくて中期経営計画が立てられないというのは、予想・予測を中心に置いているため、そうなってしまうのです。

 

そうではなく、一定の環境変化の前提のもと、どうなりたいのかという目標を定めると捉えれば、中期経営計画が立てられることになります。ですから、現状延長型のフォーキャスティング発想で中期経営計画を立てようとするのではなく、バックキャスティング発想で目標という意味合いを持たせた中期経営計画を立てればいいのです。

 

長期になると、予想・予測の割合がさらに下がり、環境変化については、共通トレンドのようなものしか当てが付かなくなります。そうした中でどのような会社を目指したいのかという目指す姿、目標という意味合いがさらに強くなります。

 

このため、長期の場合は長期計画というよりは、長期ビジョンという形での打ち出しの方が向いていると言えます。

 

長期と中期の関係については、中期経営計画を現状延長型にしてしまわないために、先に長期ビジョンを設定し、そこから中期目標に引き戻してくるというバックキャスティング発想となるような関係づけをすると良いでしょう。 

 

 

ポイント
長期ビジョン、中期経営計画、年度の予算の3本立て

 

井口 嘉則
株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット 代表取締役
オフィス井口 代表

 

 

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※本連載は、井口嘉則氏の著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

事業計画書の作り方100の法則

事業計画書の作り方100の法則

井口 嘉則

日本能率協会マネジメントセンター

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