ともに会社を経営し、仕事に情熱を傾けてきた夫婦は、子どもを持たずお互いのキャリアを尊重する人生設計を選択しました。ところが法事の席で、夫の妹は兄夫婦に対し、驚くような言葉を口にします。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。
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「相続に、お互いのきょうだいを関わらせたくない」
今回の相談者は、50歳の山本さんです。山本さんは大手企業に就職後、経験を積んで起業しました。その後、仕事のつながりで知り合った8歳年上の妻と結婚しました。結婚当初、山本さんの妻は会社員でしたが、夫に触発されて独立。これまでの経験を生かした仕事内容の会社を経営しています。2人の会社はいずれも好調です。
山本さん夫婦には子どもがなく、仕事を中心とした生活を送っています。仕事熱心な経営者二人の収入により、築き上げた資産はかなりのものとなっています。
山本さん夫妻は、コロナの状況にあって、今後をしっかり考えたいと思うようになりました。
「私たち夫婦の両親はすでに亡くなってしまったのですが、私には兄と妹、妻には弟がいます。もし夫婦のどちらかに万一のことがあった場合、きょうだいにも相続分があると聞いています。お互いの親族を巻き込むことは避けたいのです」
山本さんも妻も、ごく一般的なサラリーマン家庭で育ったといいます。山本さんの実家の財産は郊外の自宅と数百万円程度の預貯金でした。
相続発生時、すでに会社経営が軌道に乗っていた山本さんは、兄と妹に遺産を譲り、自分は相続しませんでした。また、妻は、相続時には弟と財産を均等に分けたものの、弟はかなりの浪費家で、すぐに財産を使い切ってしまったと聞いています。
「とくに気がかりなのは、子どもが3人いる私の妹のことなのです。父親の法事の席で、子どもの将来について、あれこれお金のかかる計画を口にするので、妻が〈先々まで考えていてすごいわね〉といったところ、〈だってお兄ちゃんの家の財産は、いずれこっちのものになるじゃない?〉といわれ、言葉を失ったと…」
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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