(※写真はイメージです/PIXTA)

母が亡くなり、ひとり暮らしとなった高齢の父は、地元でアパート経営を継続中。しかし、日常生活が危うくなり、息子たちは老人ホームへの入居を勧めます。納得した父に安堵しましたが、残された築古の実家と賃貸アパートが気がかりです。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

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高齢父は、地方でアパートを経営

今回の相談者は50代の会社員、坂本さんです。北関東に在住する高齢の父親に不安があり、相談に訪れたということでした。

 

坂本さんの母親は7年前に亡くなっており、故郷には高齢の父親がひとりで暮らしています。坂本さんには弟がひとりいますが、仕事の関係で九州地方に居住しており、しばらく戻らない見込みです。

 

坂本さんの父親の一族は地主で、父親は地元の中小企業に勤める傍ら、40代になってから広い土地を相続し、アパート経営をはじめました。駅近で立地がいいため人気のアパートですが、築40年を超え、建物の老朽化が進んでいます。父親はここ3年、アパートの建て替えを検討しており、入居者が退去したあとも募集をかけず、現在は半分が空室の状態となっています。

 

しかし父親は、80歳を超えてから、次第に日常生活が困難になってきました。そのため坂本さんは弟と相談し、坂本さんの自宅そばの老人ホームに入ってもらいたいと考えています。父親も「それはありがたい」と同意しています。

 

しかし、坂本さんは父親が保有する不動産が気がかりです。実家も老朽化アパートも、駅から近い、地域では人気のエリアに建っています。そのため、相続税はかなり高額になりそうだと考心配しているのです。

長男も二男も「故郷に帰る予定なし」

「父親自身も弟も、老人ホームへの入居は賛成なのですが、そうなれば、自宅は空き家になりますし、アパートだって維持費がかかりますよね。それに、地方都市ではありますが、大きな駅のそばにありますし、このままではかなり相続税がかかってしまうのではと思っていて…」

 

坂本さんは状況を冷静に分析していました。そもそも坂本さん兄弟には、実家に戻る選択肢はないといいます。

 

筆者が調査した結果、坂本さんの不安は現実のものとなりそうでした。とくにアパートのほうは老朽化がひどく、もし仮に経営を続けるとしても、修繕は現実的ではありません。

 

そのため筆者は、いくつかの方法を検証しました。

 

まずは、自宅とアパートの両方を解体し、立て替えてるケースです。好立地で賃貸環境も文句なく、賃貸事業の収支もいいのですが、建築費の借り入れが必要です。また相続の際に遺産分割しにくいという問題もあり、いい方法ではありません。

 

次は売却です。周辺の取引状況を見る限り、路線価以上の価格で売却できる可能性が高いと思われます。

 

これらのことから、筆者は自宅もアパートも売却することを提案しました。アパートはまだ入居者があるため、明け渡しの交渉や解体は行わず、現況のままで売却するのです。

 

次ページこのままでは、税金や維持費がかさんで…

本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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