独身の叔父の病状が思わしくなく、近い将来相続が発生しそうな状況です。相続人は叔母2人、相談者、相談者の妹の合計4人。すると叔母たちから、叔父の商売を受け継ぎたいから相続放棄をしてほしいとの依頼が…。妹が二つ返事で了承したことから、相談者は孤立状態です。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。
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先代からの商売を引き継いだ独身の叔父、危篤状態に
今回の相談者は、50代の女性の石井さんです。独身で子どものない父方の叔父が危篤状態で、恐らく近いうちに起こると思われる叔父の相続の件で相談したいということでした。
叔父は石井さんの亡父の弟で、叔父の下には2人の妹(石井さんの叔母)がいます。また、石井さんは妹が1人います。
叔父の相続人となるのは、叔父の妹である2人の叔母と、叔父の兄の代襲相続人となる、石井さん姉妹の合計4人です。
叔父は若いときに離婚を経験しており、それ以降はずっと独身です。子どももいません。30代までは会社員でしたが、その後は祖父母の商売を受け継いで成功させ、それなりの収益を上げていました。しかし、数年前から体を悪くしてしまい、介護施設に入所しています。
ある日、石井さんのもとに叔母のひとりから相談したいことがあると連絡が入りました。石井さんは妹ともに叔母の家を訪問すると、もうひとりの叔母の姿も見えました。
「叔父さんがそろそろ危ないのだけれど…」
そういって口火を切った叔母は、石井さんに切り出しました。
「前もってお話ししておきたいのだけれどもね、私たちふたりで、実家の商売を引き継いでいきたいの。だから、あなたたちは相続放棄してもらえない?」
石井さんの妹は「それでお爺ちゃんのお店が続けられるなら…」と叔母の話に頷きました。
末っ子の叔母は満足そうに微笑むと、言葉を続けました。
「私のうちも舅の相続を経験しているけど、手続きは本当に大変よ。面倒なことに巻き込むのも申し訳ないし…」
2人の叔母と石井さんの妹は、石井さんの顔を見ました。
「いまはなんともいえません…」
石井さんが小さく答えると、叔母たちは、戸惑ったように顔を見合わせました。その後、ぎこちない会話が続きましたが、相続にまつわる話し合いは中断しました。
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株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
京都府立大学女子短期大学卒。PHP研究所勤務後、1987年に不動産コンサルティング会社を創業。土地活用提案、賃貸管理業務を行う中で相続対策事業を開始。2001年に相続対策の専門会社として夢相続を分社。相続実務士の創始者として1万4400件の相続相談に対処。弁護士、税理士、司法書士、不動産鑑定士など相続に関わる専門家と提携し、感情面、経済面、収益面に配慮した「オーダーメード相続」を提案、サポートしている。
著書65冊累計58万部、TV・ラジオ出演127回、新聞・雑誌掲載810回、セミナー登壇578回を数える。著書に、『図解でわかる 相続発生後でも間に合う完全節税マニュアル 改訂新版』(幻冬舎メディアコンサルティング)、『図解90分でわかる!相続実務士が解決!財産を減らさない相続対策』(クロスメディア・パブリッシング)、『図解 身内が亡くなった後の手続きがすべてわかる本 2021年版 (別冊ESSE) 』(扶桑社)など多数。
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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