会話も身なりもきちんとしていた67歳の不動産オーナー。確定申告の打合せのため、会計事務所の担当者がオーナーを久しぶりに訪ねると、辺りに空き缶やワインボトルが転がり、様子がおかしくなっていました……のぞみ総合事務所代表司法書士の岡信太郎氏が、実際のエピソードをもとに不動産オーナーが陥った深刻な「お金のトラブル」を紹介します。

その額400万超え…ほったらかしにされた大量の請求書

後日……。次は大丈夫だろうかと心配していた前川さんの事務所に一本の連絡が入りました。電話に出た職員が、「前川さん、中園さんからです!」と言うので、てっきり本人からと思い受話器を手にしました。すると、声の感じが違います。

 

「いつも父がお世話になっています。中園の息子です」と、声はよく似ていますが、本人ではありません。息子からでした。そして、驚きの事実を伝えられます。「父が急きょ入院しました」

 

この前会ったばかりだったので、前川さんはびっくりして「入院?怪我でもされたのですか?」と思わず聞き返しました。すると、「いいえ、精神科のある山手病院(仮名)です」という答えが返ってきたのです。

 

なんでも、息子が実家に戻った際も、中園さんの様子がおかしかったそうです。〝気持ち悪い〞と体調不良を訴えます。そのためか、食事をまともにとっていなかったとのことです。

 

確かに、前川さんが訪ねたときも、酒の瓶や缶ばかりで、とても食事をしているようには感じられませんでした。息子の話では、アルコール依存症になっており、脳に萎縮がみられるとのことです。

 

前川さんは、「確定申告の時期が近づいているんです。それで、先日お会いしたのですが、まだ準備されていませんでした」と伺った際のことを息子に伝えました。中園さんは、収益物件であるアパートを経営しており、その管理会社の代表取締役となっているのです。

 

息子が言うには、中園さんにアパートの状況について尋ねても、「よく分からない」と答えるとのことです。

 

しかも、話はそれだけでは終わりません。アパートに関する税金の納付書や修繕費の請求書などが大量に届いているとのことです。本人はそれらをほったらかしにしており、いずれも期限切れとなっています。他にも、カード会社や通信販売と思われる請求書があるというのです。

 

その額、ざっと見積もっても400万円は優に超えています。このままアパートを維持できるのか心配になるほどです。息子が言うには、アパート経営が重荷になりそれが本人へのプレッシャーとなっていたようです。

 

また、息子の母ともだいぶ前に離婚しており、日中することもないことから酒に走ったのだろうとのことでした。

 

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本記事は、岡信太郎氏の著書『財産消滅~老後の過酷な現実と財産を守る10の対策~』(ポプラ社)から一部を抜粋し、再編集したものです。
※登場人物は全て架空の人物であり、守秘義務に反しないようにストーリーを展開しています。

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

岡 信太郎

ポプラ社

5年後には「65歳以上の5人に一人が認知症を発症する」といわれている昨今の超高齢社会。認知症は介護などの生活面だけではなく、資産運用や契約など財産面にも大きな影響を与えます。 多くの認知症患者の成年後後見人として…

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