先のみえないこの時代……老後のことを考え「まずは貯蓄」と考えている方も少なくありません。さらに、金融庁が試算した「老後2,000万円問題」の報道を受けて、老後資金への不安がますます高まりました。そのようななか、数々のシニアの資産を預かってきたのぞみ総合事務所代表司法書士の岡信太郎氏は、この状況を冷めた目でみているといいます。高齢者の「貯金信仰」と、岡氏が危惧する「日本経済崩壊の危機」にはどのような関係があるのか、みていきましょう。

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「老後には2,000万円必要」は短絡的な議論か

日本人は、貯蓄を好む国民だと言われています。

 

2019年(令和元年)、金融庁の金融審議会が〝老後には2000万円必要〞と試算したことが大きく報道されました。

 

あくまで1つの基準としながらも、この数字は国民の注目を集め賛否両論が渦巻きました。いかに私たちが老後の資金についてナーバスになっているのか誰の目にも明らかになったのです。

 

[図表1]世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高(二人以上の世帯)2020年
[図表1]世帯主の年齢階級別貯蓄・負債現在高(二人以上の世帯)2020年

 

報道が過熱していく中、これまで成年後見人などの立場でシニア層の財産を預かってきた身としては、この状況を冷めた目で見ていました。数字だけが独り歩きした短絡的な議論ではないかと……。

 

確かに、将来に対する漠然とした不安が日本全体を覆っています。この先、何かあったときに頼りになるのはおカネです。だからといって、一律に判断する必要はないように感じています。

 

そもそも、平均寿命が毎年公表されていますが、人の寿命は当然のことながら人それぞれです。生涯病気知らずの方もいて、平均寿命を大きく上回ることも珍しくありません。そのような方の中には、年金だけで十分やっていけると手応えを感じている方もおられます。

 

一方、若くして介護や長期療養を必要とする方もいらっしゃいます。介護や療養が長引けば、自宅での生活が難しくなり、介護施設での生活が長期にわたることが考えられます。自宅を売却せずに維持しながらとなると、二重に支出が増えるケースもあります。

 

実際のところは、個人の寿命や健康状態によって、老後に必要な資産は大きく変わってくるのです。

 

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本記事は、岡信太郎氏の著書『財産消滅~老後の過酷な現実と財産を守る10の対策~』(ポプラ社)から一部を抜粋し、再編集したものです。

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

財産消滅 老後の過酷な現実と財産を守る10の対策

岡 信太郎

ポプラ社

5年後には「65歳以上の5人に一人が認知症を発症する」といわれている昨今の超高齢社会。認知症は介護などの生活面だけではなく、資産運用や契約など財産面にも大きな影響を与えます。 多くの認知症患者の成年後後見人として…

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