目的の共有だけではなく「情報の共有」も重要
チームパフォーマンスは、スポーツで考えると分かりやすいかもしれません。例えばテニスのサークルがあったとします。そのなかにはテニスが好きでただプレーしたいだけという人もいればサークルの大会で優勝したいという人もいます。なかには異性にモテたいだけという人もいるかもしれません。このようにサークルは目的がバラバラであることが多く、チームにはなり得ません。こういう集まりを「集団」といいます。
「集団」であるこのテニスサークルに熱い人がやってきて「みんなで優勝を目指そうぜ!」と言われてもかえって迷惑です。集団は人が集まっていること自体に価値があり、それはそれで存在意義があるわけですがチームとは別のものです。
これが部活動やプロ選手の団体であれば、みんなが優勝するという目的を共有しているのでチームになり得ます。相談、意見交換、ノウハウ共有、切磋琢磨といったことが起こります。
在宅専門の薬局設立では、Aさんたちと私は目的を共有することでチームになれました。しかし、Aさんたちが赤字でもいいから患者の役に立ちたいと考えていたのに対し、私は患者の役に立つと同時に利益も出さないといけないと考えていました。目標が違っていたのです。
だから何度も話し合いをしてお互いの意見を擦り合わせました。忘れがちになるとはいえ、そもそも目的が存在しないチームなどありません。ただ腹に落ちるまで議論しているチームは少ないといえます。「患者のために」といってもどこまでやるのか、その前提は何なのかと、そういったことまで共有できているかが大切なのです。この点に関しては私は利益を出してこそという部分は譲りませんでした。それを前提にみんなが納得するまで議論を重ねたのです。
しかし、ただ議論すればいいというわけではありません。信頼感が醸成されていないと議論しても時間の無駄です。信頼感を得るためにはリーダーは当初設定し、合意した「患者の役に立つ」という目的からぶれた行動をいっさい執ってはいけません。リーダーには一貫性が重要です。
さらに情報はガラス張りにしました。個人情報(給与や評価、処遇)は別として、少なくとも業務に関してはリーダーだけが知っている情報をもたないことが肝心です。一部のメンバーだけに教えるというのもよくありません。だから私はAさんと二人だけの打ち合わせはせず、必ず4人全員で打ち合わせをしました。
情報をガラス張りにするとよいのは信頼感が生まれるだけでなく、そうすることによってチームメンバーが他人事と思わなくなることです。全部自分のことととらえてくれるようになり、徐々に主体性が芽生えてきます。