(※写真はイメージです/PIXTA)

チームパフォーマンスとは、チームが実現すべき成果に影響を与えるメンバーの主体的行動の総和です。メンバーから主体的な行動を引き出すには、主体的行動の発揮に影響する心理的要因をいかに高めるかが重要です。心理的要因は、①目標共有、②心理的安全性、③チームへの愛着、④メンバー信頼、⑤チャレンジ精神、⑥仕事のやりがい、⑦プロセス重視、⑧顧客重視、⑨チーム貢献への自信の9つ。本稿では、プロセス重視、顧客重視、チーム貢献への自信を高めるマネジメントについて解説します。

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「プロセス重視」を高めるには?

■「どのようにやったか?」というこだわりがチームパフォーマンスを高める

プロセス重視は、仕事のプロセスをチームとして大切にしていると感じる度合いです。

 

これは特に、仕事の進め方をより良くするための取り組み「プロセス改善行動」に影響を与えますが、チームの運営や活動をより良くするための「チーム運営向上行動」や、自分以外のメンバーの仕事がより良くなるために、出し惜しみせずに自ら支援や提案をする「メンバー支援行動」、メンバーの力を活かしてより良い仕事をするためのコミュニケーションである「チーム力活用行動」にも影響を与えます。チームが結果至上主義ではなく、プロセスを重視していると感じられれば自分の仕事の仕方を改善しようと思いますし、チームやメンバーのプロセスの向上にも主体的に取り組むようになるからです。

 

もちろん結果を出すことは決定的に重要です。売上目標があってそれを達成できないのであれば責任を問われて当然ですし、昇給や賞与、昇格等に影響することもあります。

 

だからといってどんなやり方でもいいから結果を出せということであれば、チームパフォーマンスは向上しません。良い結果を出すには良いプロセスが必要だという観点を共有し、結果が良くても悪くてもプロセスを振り返り、徹底して改善しようとする姿勢が大切です。

 

どんな結果を出したか以上にどのようにやったかにこだわることが重要なのです。チャレンジするチームを作りたいのであれば、グロースマインドセットのメンバーの集団にしなければなりません。グロースマインドセットこそ主体的な行動の源泉なのです。

 

ただしプロセス作りが目的になってはいけません。プロセスはあくまで手段です。チームの目的を常に意識して、プロセスを作り込んでいかないと、プロセスのためのプロセスを一生懸命作るような本末転倒な事態になってしまいます。

 

プロセスを重視することは心理的安全性にも良い影響を与えます。プロセスを重視すればこそ、多くの人の意見を必要とし、求めるようになるからです。チーム全体がこうした風土になれば、メンバーのマインドセットもポジティブに変化していき、主体的な行動が発揮されていきます。

 

■プロセス重視は「ヒーローインタビュー」で作り上げる

プロセス重視の会社でよく行われるイベントがヒーローインタビューです。大きな受注に成功した営業パーソンがいたなら、その人に受注するまでのプロセスを語ってもらうのです。聞く側は苦労したこと、困ったことに重点を置いてインタビューします。本人は良い結果を出したプロセスを自然に振り返る機会になります。さらにそのプロセスでの苦労や困難を好意的に受け止め、「プロセスにこだわることは重要」だという思いが強化されます。また、ヒーローインタビューを見ている側は、プロセスの重要性が理解できますし、元気ややる気ももらえます。そしてプロセスを大切にしようと思うようになるはずです。

 

ちなみに営業力が強いことで有名なある会社では、上手なヒーローインタビューができることがマネージャーの資格要件なのだそうです。

「顧客重視」を高めるには?

■「顧客は誰か、どのように役立とうとしているのか」を明確化して共有

顧客重視は、自分たちにとっての顧客は誰でどのようにその顧客に役立っていくのかを意識している度合いです。これは特に、顧客に対して自分ができる最大限の貢献をしようとする「顧客貢献行動」、自分の仕事に全力で取り組み最善を尽くす「最善行動」、仕事の進め方をより良くするために取り組む「プロセス改善行動」に影響を与えます。誰のために、何をすべきかがはっきりするからです。

 

顧客貢献に向けた取り組みを引き出すには「私たちの顧客は誰か、彼らにどのように役立とうとしているのか」を明確にし、メンバーと共有することが必要です。私たちの顧客は誰かと尋ねたときに、メンバーが同じ答えをするかどうかがポイントです。答えが食い違うようであれば、いわゆる「ベクトルが合っていない」という状態です。今すぐにでも共有のためのミーティングをするべきです。

 

顧客像を明確にイメージできることが大切です。コーヒー飲料の販売をしているチームならば「コーヒーを飲む人」よりも「コーヒーを飲むことで仕事の合間にリラックスしたい人」とするほうが、より鮮明な顧客像となります。顧客像を鮮明にすることで、自分たちが何をするべきかも明確になります。なお顧客は一種類とは限りません。鮮明にしていくと、また違う顧客像が出てくるものなのです。それぞれに何をなすべきか明確にしていくことが必要です。

 

営業や販売といったいわゆる直接部門は顧客がイメージしやすいのでまだやりやすいのですが、人事や経理などの間接部門は顧客を設定するのが難しいものです。従業員、経営陣、会社全体など内部の人間が自分たちの顧客になるのが一般的ですが、それがチーム内で統一されていないケースが多々あります。自分たちの顧客が社長なのか、社員なのか、その先のクライアントなのかが決まっていなければ、チームとしての力を発揮することはできません。まずは顧客の共通認識を図ることが大切です。

 

もう一つ大切なことは、顧客の役に立つことが本当に評価されるのかということです。

 

顧客の要望と真剣に向き合った結果、会社が販売に力を入れている商品と違うものを提案したら怒られたとします。おそらくその人は今後顧客よりも会社の都合に合わせた提案をするようになるはずです。このようなことはありがちなうえ、怒られた当人にとっては、トラウマといっていいようなかなり強烈な体験になります。一貫性が大切なのはどんなことでも変わりませんが、特に顧客重視では大切です。

「チーム貢献への自信」を高めるには?

■「メンバー同士でよく相談し合うチーム」はパフォーマンスが高い

チーム貢献への自信とは、メンバーとしてチームに役立てると感じる自信の度合いです。

 

これは特に、自分の意見や考えをチーム内で進んで伝える「発信行動」に影響を与えます。貢献できるという自信がなければ、いくら心理的に安全でも発言しにくく、必要とされているという実感が湧かないからです。

 

チーム貢献への自信を高めるためには本人の力を高めるとか、経験によって自信を付けさせることが大事です。ただ、力はあるのに自信がないという人もいます。そこでもう一つ大事なことは「必要とされている」という実感をもたせることです。そのために効果的なのが相談するということです。意見や提案が必要というメッセージとともに、リーダーやほかのメンバーが相談を投げかけるということがポイントです。人は他者から相談されたり、アドバイスを求められたりすることによって、必要とされていると実感するものだからです。メンバー同士がよく相談し合っているチームは高いパフォーマンスを発揮しているものです。

 

 

橋本 竜也

株式会社日本経営  取締役

 

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※本連載は、橋本竜也氏の著書『チームパフォーマンスの科学』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

TEAM PERFORMANCE チームパフォーマンスの科学

TEAM PERFORMANCE チームパフォーマンスの科学

橋本 竜也

幻冬舎メディアコンサルティング

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