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「ベストプラクティス」を求め過ぎるのは危険
■先行きの見えない時代、「既存の成功事例」が「正解」とは限らない
「数値化などと堅苦しいことをいわず、このやり方で効果があるという方法を見様見真似で取り入れていけばいいのではないか?」という疑問の声もよく聞きます。
こういった既存の成功事例にならうことは、ベストプラクティス(最善慣行)と呼ばれています。大成功している組織のやり方が最善であり、それを真似するのが最も効率よい改善方法だという発想です。
しかし「1on1ミーティングがいいらしいぞ。なんでも週に30分ずつ部下と面談するのだそうだ。8人いるから4時間か…。大変だけど、それでグーグルのようになれるんだったら、やってみる価値はあるかもしれないな」といった気持ちで始めるのであればやめておいたほうがよいと思います。
そもそもベストプラクティスは世の中には「正解」があるという考え方に基づいています。しかし今は先の読めない時代です。正解などないほうが普通なのです。
正解を求める人は部下にも正解を与えたいはずです。そんな人が1on1ミーティングをやれば、コーチングというよりはアドバイスを与える場になってしまう可能性があります。
しかし正解のない現代においてアドバイスは諸刃の剣です。的外れなアドバイスをすればするほど上司のだめさ加減が部下に伝わることもあり得ます。一方で、間違ったアドバイスでも与え続けられると、部下は思考停止に陥りすぐに正解を求めるようになりかねません。
■重要なのは、「自分たちのチームでどう(How)やるか」を考えること
グーグル社が1on1ミーティングという人材マネジメントで成功している、ということを知るのは問題ありません。詳しくやり方を調べるのももちろん良いことです。勉強熱心な人を非難する理由はありません。ただそれをそのまま真似するのはあまり良いことではないのです。会社の規模も歴史も年齢構成も男女比もグーグル社とは違うはずです。チームの目的や目標、存在意義もグーグル社とは違います。まったく同じ方法が通じるわけがないのです。「うちはどうやればいいのだろうか?」こう自身に問いかけることが大切であり、それをチーム全員で話し合うべきなのです。
何(What)をやるかではなく、自分たちのチームでどう(How)やるかを考えることが決定的に重要です。
最近よくTTP(徹底的にパクる)という言葉を聞きますが、人真似をして成功するのであれば誰も苦悩はしないのです。ですから「これをやれば必ず成功する」といった類いの書籍やセミナーは警戒すべきです。そういわないと本が売れなかったり、集客ができなかったりといった諸事情があるのは分かります。ただ正直な人は「私が説明する内容はあくまで理論です。実践に際しては、あなたの状況に応じたやり方があります」と言うはずです。
物真似をしていても「オリジナル」以上にはなれない
■ベストプラクティスに学ぶべきは「プロセス」
ベストプラクティスやTTPに対しては、革命的なイノベーションは生まれないという批判があります。よく例に出されるのはメキシコオリンピックでの背面跳びの登場です。ディック・フォスベリーが編み出した走り高跳びのまったく新しい飛び方ですが、フォスベリーが当時のベストプラクティスであったベリーロールにこだわっていたら生まれていたか疑問です。同様のことが自動車やパソコン、スマートフォンなどにもいえます。方法や製品だけではありません。最近生まれたビジネスモデルの多く、例えばウーバーやエアビーアンドビーなどはベストプラクティスからは生まれなかったはずです。
もちろん他人や他者から学ぶことは必要です。何でもゼロから自分で生み出せるわけではありません。スマートフォンは画期的な製品でしたが、その要素は携帯電話、デジタルカメラ、ポータブル音楽プレイヤー、Webブラウザといったそれ以前から存在していたものばかりです。それらを1台の持ち運び可能なデバイスに搭載したこととタッチパネルという新しい入力方式を全面的に採用したことで爆発的に普及し、今ではそれなしの生活が考えにくいものになりました。
スマートフォンから学ぶとしたら、どうしてそのような発想が生まれたのかや製造ラインに載せるまでにどういう課題があって、どうやって解決したのかといった部分です。スマートフォンをいくら分解しても、新しいスマートフォンが作れるわけではありません。物真似をしていても、オリジナルを創った人や会社には勝てないのです。
■現代に合う課題解決手法は「OODAループ」
よく「銀の弾はない」といわれますが、これさえあれば複雑な課題がすべて解決するという処方箋など世の中に存在しません。ベストプラクティスを自社にどう適用するかというモデルケースとして扱うのであればまだしも、それをTTPしても何も解決しません。
そこで行うべきは原点に戻ることです。マネジメントを改善するには、昔からPDCA(Plan=計画、Do=実行、Check=測定・評価、Action=対策・改善)サイクルを回すことだといわれてきました。移り変わりの激しい現代では、そもそも計画を立てることが難しいので、状況把握を最初にやろうというOODAループという手法が注目されています。
OODAとはObserve(観察)、Orient(状況判断)、Decide(意思決定)、Act(行動)の頭文字を取った言葉です。PDCAが中期経営計画、年度計画、四半期計画といった比較的長期的なスパンでの計画を実現するための手法であるのに対して、OODAは刻一刻と変化するビジネス環境に対応するための手法です。まさに今の時代に合った課題解決手法といえます。
またOODAでは環境変化で生じる新しい課題、つまり答えのない問題に即応することが求められるため、自ら考え行動する個人を増やすのに効果的だといわれています。これこそ自律型チームを構築するのにまさに打ってつけの手法です。
このOODAの実行についてはまずはチームの現状を確認(観察)することから始まります。私たちのモデルに当てはめると、チームの成果に影響を与える「主体的行動」がどれくらい実践されているかを知ることがこれに当たります(【関連記事:「成果を出せるチーム」が実践している「行動」とは? 】)。続いてチームの問題を分析(状況判断)します。これは、主体的行動の発揮に影響する「心理要因」の現状把握となります。その後、心理要因の改善案を話し合い、チームの方針を決定(意思決定)します。方針が決まればそのとおりに動きます(行動)。そしてまた1ヵ月後なら1ヵ月後にチームの現状を確認し同じループを回していきます。
OODAでもPDCAでも、現状の把握および分析には数値データが欠かせません。きちんと数値データに基づいた議論をすることで、効果的な改善ができます。そもそも数値データがなければ前回から改善されたのかどうかを評価するのも難しいのです。
自分たちの目で観察し自分たちの頭で考え、自分たちで意思決定し、そして自分たちのやり方で行動することが、本当の意味での「ベストプラクティス」なのです。
橋本 竜也
株式会社日本経営 取締役
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