(※写真はイメージです/PIXTA)

AIがあなた好みの服を選ぶ? ニューヨークに本社があるスティッチフィックスはデータサイエンス技術を活用し、ファッションアイテムをセレクトして顧客に届けるサービスを展開しています。なぜ300万人の顧客を抱え、急成長しているのか、その理由をダグ・スティーブンス氏が著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)で明らかにします。

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      コストコに顧客サービスは存在するのか?

      「コンシェルジュ」型

       

      ■消費者の問いかけ「最高水準のサービスはどこで受けられるの?」

       

      伝説的な真のサービスは、高級ブランドか、少なくとも高価格帯寄りのブランドの領域に限られるという認識が小売業界にはある。並外れたサービス体験を実現するには、スタッフに対するそれなりの給与とトレーニングが不可欠であり、その原資となるのが、高級品販売ならではの大きな利幅だというのが、アナリストの一般的な説明である。

       

      しかも、卓越した顧客サービスの話題になると、決まってノードストロームやグッチ、リッツカールトンといったブランドが象徴のように語られているのも事実である。

       

      優れた顧客サービスとは、本質的にふれあいを重視したきめ細かな応対というのも常識化している。これもまた真実である。たとえば、アップルストアは、来店客5人に対してスタッフ1人を配置する水準を維持していて、顧客のそばに常に誰かがいることで、親近感を覚える接客が可能になっている。

       

      グッチも、販売員が倉庫に在庫を探しに行くために売り場を離れることのないよう、スタッフの役割分担を徹底している。在庫確認などの仕事は「ストアランナー」と呼ばれるスタッフに一任されている。倉庫から商品を探し出して販売員に渡すことだけに専念するスタッフだ。

       

      このため、優れたサービスと言われて、まず頭に浮かぶのは、こうしたブランドなのだ。今挙げた典型例のどちらにも当てはまらない優れた顧客サービスというのは、なかなか思いつかない。実は、あまり目につかない形態の顧客サービスというものもあって、これを売り物にして今日の揺るぎない地位を築いているのが、コストコである。

       

      コストコで買い物をしたことがあれば、「ちょっと待ってくれ、コストコは倉庫型店舗で、顧客サービスらしいサービスなんてあるわけがない」と違和感を覚える方もいるかもしれない。まさにそこがポイントなのだ。コストコの顧客サービスがうまく機能しているため、その存在に顧客が気づきさえしないのである。手厚いサービスとは、人間的な温かみが感じられるか、大きな利幅を原資にした至れり尽くせりのものかのいずれかだという常識を頭から否定するのが、コストコである。

       

      ノードストローム百貨店などの小売業者と異なり、コストコは商品販売であまり儲けていない。諸説あるのだが、ほとんどのアナリストがコストコの粗利益率は8~12%の間のどこかと見ていて、一般的な小売業者の30~50%と比べて圧倒的に低い。同社の収益のほとんどを占めているのが、商品の売り上げと会員の更新料だ。世界全体で少なくとも9700万人の会員数を誇るだけに、後者のほうが重要なのである。

       

      これは、圧倒的な顧客サービスを求めるニーズに見事に応えるモデルである。なぜか。第1に、利益を出すためには、店舗内のあらゆる処理を最大限に効率化しなければならない。顧客の流れを妨げるものは一切排除し、常に最適化を図らなければならない。したがって、店内で顧客がフォークリフトやらパレットトラックやら品出し・陳列中のスタッフやらの障害物を回避して歩くようなことがあってはならないのだ。実際、コストコでは皆無である。その日の品出し・陳列は開店前にすべて完了しているからだ。

       

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        ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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