(※写真はイメージです/PIXTA)

AIがあなた好みの服を選ぶ? ニューヨークに本社があるスティッチフィックスはデータサイエンス技術を活用し、ファッションアイテムをセレクトして顧客に届けるサービスを展開しています。なぜ300万人の顧客を抱え、急成長しているのか、その理由をダグ・スティーブンス氏が著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)で明らかにします。

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    「購入1年以内、返品可能」な顧客サービス

    商品の価格を店員に尋ねる必要もない。すべての商品に明確に価格が表示されていて、納得して購入判断を下すのに必要十分な情報が添えられているが、複雑な情報や混乱するような情報はない。実演や試食・試飲が必要な商品の場合、コストコでは、仕入れ先に店頭での実演、商品担当者派遣、試食・試飲を要請することも多い。

     

    一貫性のある店内レイアウトとシステムを採用しているため、世界中のどのコストコ店舗に足を運んでも買いまわりが容易だ。私は旅先でも妻と一緒にコストコに買い物に出かけることがあるが、どの商品がどの辺りにあるのか簡単に予想がつくので、まごついたことがない。店舗の入り口で出迎えを受け、そこで有効な会員証を提示して入店する。

     

    たいていの場合、入って最初に家電・エレクトロニクス売り場があり、続いて新商品・目玉品などがある。生鮮食品は店の奥で、包装食品などは店舗の片側に並んでいる。医薬品はレジの近くで、衣料品は中央に集められている。コストコなら、目隠しされても店内を歩き回れるほどだ。

     

    大量に買い込んでも、レジは何ら問題なくスムーズに処理されている。各レジは2人体制で整然と処理していて、時間をとられずに効率よく買い物を済ませることができる。会員証の更新時期が近づいていると、レジで声をかけられ、買い物と一緒に更新料も支払える。

     

    だが、あっと驚くのはここからだ。コストコで購入して満足できなかった商品があれば、購入1年以内に限り、ここで返品して全額返金を受けることも可能なのだ。なんと購入1年以内である。そのときのレシートを忘れても焦ることはない。コストコではワンタッチで購入履歴をすべて呼び出せる。

     

    コストコでは、面倒だとか、ややこしいとか、パッと見てわからないと感じるものが皆無なのである。不必要な売り場やディスプレイ、テクノロジーは店頭に置かない。タブレット片手に売り場の通路をうろうろしている無駄な従業員もいない。本当にいないのだ。コストコは、当たり前のことを熟練の技で実践しているだけなのである。

     

    滅多にないと思うが、どうしても従業員の助けが必要な場合、懇切丁寧に親身になって助けてくれる。それは、コストコの平均的な店舗従業員の賃金が、ウォルマートなどの競合店で働く従業員に比べてかなり高いこととも関係があるはずだ。

     

    充実したブランド体験があることから、北アメリカ地区のコストコの顧客はその90%以上が毎年会員を更新している。また、ヨーロッパ地区では90%弱となっている。これは驚異的な更新率である。

     

    私がコストコについて語るとき、よくこんな説明をする。私は普段、いろいろな小売店を利用しているが、ポークチョップを買いに出かけただけなのに、なぜかポークチョップとカヤックを抱えて出てくるような店はここだけだ。コストコは、それと気づかないように巧みに顧客サービスを取り込むことで、ときおり理性を忘れたような買い物をするよう仕掛けてくるのだ。

     

    このような理由で、私としては、ノードストローム百貨店も、コストコも「コンシェルジュ型」の小売業者と位置づけている。それぞれやり方はまるで違うが、行き着く先は同じだからだ。卓越したサービスである。単に身につけた手順どおりの対応ではなく、体系に沿った実践方法や卓越した体験のデザインが生み出すサービスなのである。

     

    ダグ・スティーブンス
    小売コンサルタント

     

     

    ※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    ダグ・スティーブンス

    プレジデント社

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