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老人ホームは現代の姥捨て山か?
私は、老人ホームへの「入居」という現象を見ていると、老人ホームは現代の「姥捨て山」と何ら変わらないと思っています。そして、その現象は、個人的には、きわめて残念なことだと感じています。
多少の救いがあるとすれば、心ある一部の老人ホーム事業者は、たとえ姥捨て山であったとしても、少しでも、まともな姥捨て山にしなければならないと考えているところです。
しかしです。この事実をもって、私は、すべての人に対し「けしからん」と非難する気にはなれません。現実的なことを考えた場合、この現象は「しかたがない」ことだと思うからです。
もちろん、お金がたくさんあれば、何も悩むことはありません。大金を使い高級老人ホームに入居さえすれば、大方のことは解決します。老後の課題の多くは、お金で解決することができるのです。何度も言います。介護の沙汰も金次第です。これが現実です。受け止めなくてはなりません。
しかし現実は……。多くの人の場合、老後を十分に過ごすためのお金はありません。冷静に考えてみれば、しごく当たり前の話です。多くのケースでは、子供を教育するために多額のお金を子供に投資します。しかし、その投資したお金が利子をつけて戻ってくる可能性はけっして高くはありません。というよりも、今の時代は、ないに等しいと思います。
高度経済成長期ならいざ知らず、今は、経済も右肩下がりの時代です。偏差値の高い大学を卒業しても、仕事にありつける保証はありません。さらに、仕事に就いたとしても、高い賃金をもらえる保証もありません。1億総中流という言葉が、かつてありましたが、今
は、これまで「中流」と言われてきた人たちが、貧困層への道を突き進んでいる転換期の中にいます。
これから高齢者の仲間入りをする世代にとって、自分の老後が安心で、十分なお金を用意することができるなど、夢のまた夢の話なのです。
さらに問題を複雑にしていることは、困った親の面倒を見なければならない子世代の多くが、社会の中では、その役割を終え、社会から抹殺されようとしている点です。
その昔、人間50年と織田信長は謡っていましたが、今の時代も実は人生50年です。多くの一流企業では、50歳の声を聞くと「役職定年」「子会社への出向」「早期退職」となります。エリートであればあるほど、このようになっているはずです。それでも、大手企業の場合、割増しの退職金など手厚い金銭が保証されているため、まだましです。
中小企業に至っては、何もありません。ただ単に、新しい戦力と選手交代して会社から捨てられるだけです。そして、この話をさらにややこしくしていることに、晩婚化があります。50歳以上になっても、まだ子供が高校生、中学生というケースが珍しくないという現実です。
もちろん、中には50代でスキルアップを伴なう転職や起業で経営者になる人もいるとは思いますが、それはごく限られた少数派の話と考えるべきです。
つまり、親を老人ホームに入れることを検討している子世代、というよりも検討しなければならない子世代は、事実上、親の面倒を見る余力はない、ということなのです。さらに言うと、いまだに、親に何らかの経済的支援をお願いしている50歳代の子世代も珍しくありません。
多くの50歳代の子世代の本音は、親の老後どころの話ではなく、自分の老後のほうが心配だ、ということのほうが、実際の話だと私は思っています。
そんな子世代が親の老人ホームを探している時、「親のためにもっと良い老人ホームを探すべきでは? もっとお金をかけるべきでは? 老人ホームは、安かろう、悪かろうなんだから、高いホームのほうが良いに決まっている」などということを言えるでしょうか? 誰がいったい、子供の行動を責めることができるでしょうか?
高齢者問題は、明らかに社会政策の問題です。国民一人一人が自力で解決できるような簡単な問題ではありません。国家が責任を持って解決策を考えるべき問題だと、私は思います。
小嶋 勝利
株式会社ASFON TRUST NETWORK 常務取締役
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