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住宅型有料老人ホームとは?
簡単に住宅型有料老人ホームについて触れておきます。全国にある老人ホームの中で、一番たくさん供給されているのが、この住宅型です。しかし、多くの住宅型は、間違った運営をしているため、実は介護付きと大差がなく、わかりにくい運営になっています。「介護付き」と「住宅型」との違いは、ここではポイントだけ触れておきます。
介護付き有料老人ホームは、特養(特別養護老人ホーム)の代替品として発展しました。そして、住宅型有料老人ホームは、介護付き有料老人ホームの代替品として発展しました。残念ですが、これらのことの背後には「高齢者の生活の向上」というキーワードは存在しません。あるのは、どうすれば介護保険報酬をたくさん獲得でき、商売になるのか? という動機だけです。
だから、きわめてわかりやすいシンプルな仕組みが、きわめてわかりにくい複雑な仕組みに変化してしまっているのです。言い方を変えれば、目的別に使い分けるべき3つのスキームが、お互いの領域を侵食しているがゆえに、どこが違うの? という状況になってしまっています。具体的に説明を加えます。
そもそも、特別養護老人ホームは、社会のセーフティーネットという位置づけでなければならないはずの老人ホームです。したがって、多少、難なんはあっても低所得の要介護高齢者の「最後の砦」的な老人ホームという役割、目的があるはずです。しかし現状は、多くの特養ホームは、高級化が進み、高価格ホームになってしまい、低所得の要介護高齢者が思うように入居することができません。
介護付き有料老人ホームは、多少資金面で余裕がある要介護高齢者が、特養ホームよりもきめ細かな対応を望んでいる場合の受け皿として、誕生したはずです。したがって、介護体制はほぼ、特養ホームと同じで、違うのは、ホテルコストと有償サービスを自由に設定できるところです。
さらに、住宅型有料老人ホームは、要介護状態がそれほどひどくない高齢者が、安心安全を理由に自宅で生活をするより、老人ホームでの生活のほうが良いのでは? と判断して、自ら選んで入居するという老人ホームです。
乱暴な言い方をすれば、低所得の要介護高齢者は特養ホーム、金銭的に余裕がある要介護高齢者は介護付きホーム、金銭的に余裕があり、かつ、比較的元気な高齢者が安心を求めて入居するのが住宅型老人ホームという役割分担になるはずです。
しかし、現状はというと、特養ホームは、低所得の要介護高齢者の入居を拒こばみ、比較的経済的に豊かな要介護高齢者の争奪戦を介護付きと行い、住宅型は、介護報酬を獲得することが一番の収益向上、経営安定の道だという判断のもとに、重症の要介護高齢者の争奪戦を介護付きとやっているというイメージです。だから、「特養とは、介護付きとは、住宅型とは」と言ってもよくわからないし、わかりやすい説明もできない、ということなのです。
老人ホームを探している入居者にとっては、この違いを詳細まで理解する必要はありません。というよりも、理解をするためには、かなりの労力が必要なので「無理です」ということになります。したがって、この違いは無視してホーム選びをすることにしていきます。