(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸人は、築95年の物件を共同住宅に建て替えるため、住人に立ち退き交渉を進めたところ、同物件に60年以上住む貸借人がこれを拒否。裁判となりました。両者の事情を確認したうえで裁判所はどのような判決を下したのでしょうか。交渉賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

裁判所が認めた「正当事由」②賃借人が高齢

これに対して、賃借人側の事情(居住の必要性)については、以下のように認定しました。

 

「控訴人は、昭和27年2月から本件建物を住居として利用しているところ、95歳と高齢となるまでGの援助を得ながらも自ら家事を行って単身で生活することができたのは、本件a室が慣れ親しんだ居室であることが影響していると解される。」


「また、控訴人が通院する医療機関等は本件建物周辺にあり、生活の援助を受けているGは隣接した67番2土地に居住していることから、控訴人の従前の日常生活及び通院治療を継続するためには、本件建物周辺に居住することが必要であるところ、控訴人が高齢であり、年金以外の収入がないことからすると、本件建物周辺において、新たな賃借物件を確保することは容易ではないと推認される。」


「加えて、控訴人の年齢及び本件a室での生活歴が長く、同室での居住の継続を強く希望していることからすると、転居による生活環境の変化から受ける心理的・肉体的負担は、通常の場合よりも大きいものと推察される。そうすると、控訴人が本件a室に居住する必要性は相当程度高いというべきである。」

 

「もっとも、Gによる控訴人の日常生活や通院の援助が可能な範囲で新たな賃貸物件を確保することが全く不可能であるとまでは認められず、新たな住環境を適切に整えることにより、転居に伴う控訴人の心理的・肉体的負担は軽減することができると考えられる。」

 

上記のように、賃貸人、賃借人双方の事情を考慮した上で、裁判所は、

 

「上述した双方の必要性を比較すると、被控訴人の必要性の方が高いと認めるべきであるが、控訴人に生じる不利益も看過できないことから、控訴人が本件a室から退去することによる不利益を補う立退料の提供がされることにより、本件解約申入れに正当事由が具備されるというべきである。」

 

と判断しました。

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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