(※写真はイメージです/PIXTA)

賃貸人は、築95年の物件を共同住宅に建て替えるため、住人に立ち退き交渉を進めたところ、同物件に60年以上住む貸借人がこれを拒否。裁判となりました。両者の事情を確認したうえで裁判所はどのような判決を下したのでしょうか。交渉賃貸・不動産問題の知識と実務経験を備えた弁護士の北村亮典氏が、実際にあった裁判例をもとに解説します。

裁判所が認めた「正当事由」①建て替えの必要性

裁判所がこのような判断をした理由は以下になります。

 

まず、賃貸人側の解約の必要性、すなわち建物の老朽化については、以下のように認定しました。

 

「本件建物は建築されてから95年以上が経過しており、本件a室については、内部の床、天井、壁及び外壁等について控訴人による補修が行われているものの、c室及びd室部分の老朽化は著しい。

 

また、本件建物全体に共通すると推認される構造や建築方法等に、本件a室についても基礎や柱、耐力壁等の躯体部分について改修工事は行われていないことを併せ考えると、耐震性の点でも危険性を否定することができない。」

 

「さらに、本件建物は、準防火地域に指定され、密集して建物が存在し、国土交通省から「地震時等に著しく危険な密集市街地」に該当するとされている区域内にある本件敷地上に存在するが、耐火性を欠いている。」

 

「被控訴人が本件建物の老朽化に対する補修や耐震性の補強を行うには、相当高額の費用を必要とすることが容易に推認されるとともに、それによっても本件建物の機能の増加は限定的なものに留まるといわざるを得ない。」

 

「加えて被控訴人は、本件建物のc室及びd室部分が傾斜した状態にあることから、近隣への危険性があるとして対処を求められている上、被控訴人が本件建物を賃貸し、収益物件として利用してきていることからすると、

 

被控訴人が本件建物を取り壊し、本件敷地上に耐震性、耐火性を考慮した新たな共同住宅を建築しようとすることには相当程度の合理性があるというべきである。」

 

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※本記事は、北村亮典氏監修のHP「賃貸・不動産法律問題サポート弁護士相談室」掲載の記事・コラムを転載し、再作成したものです。

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