(※写真はイメージです/PIXTA)

手元にキャッシュがあれば、会社の倒産リスクを大いに減らすことが可能です。備えておくべき金額の目安は「固定費の6ヵ月分」。企業によっては、銀行などの金融機関から融資を受けることも必要でしょう。ただし、金融機関から借りるためには「貸したい」「借りてほしい」と思われる会社でなければいけません。資金繰り専門の税理士が、融資を受けやすくするためのテクニックを紹介します。

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    融資が受けやすくなる「実績」作り

    銀行などの金融機関の融資には2種類ある。

     

    1つは、全国信用保証協会連合会の保証付融資。一般的にはこの融資を受ける会社が多い。保証付であるため、返済が滞ったり貸し倒れになったりした場合には信用保証協会がいったん立て替えて弁済する。銀行などの金融機関にとっては貸すリスクが小さく、貸しやすい。会社側から見ると、審査基準が低くなり、借りやすい。

     

    2つ目は、プロパー融資。これは銀行などの金融機関が直接融資するもの。銀行などの金融機関が貸倒リスクを負うため、信用度が高い会社にしか融資実行しない。会社側から見ると、審査基準が厳しくなり、借りにくくなる。借りられた場合、保証付融資ではないので、保証協会へ支払う保証料が不要になる。

     

    狙いたいのはプロパー融資。保証料がないというのもメリットなのだが、重要なのは「プロパーで借りられた」という実績ができること。

    借りるときは「プロパーでお願いしたい」のひと言

    銀行などの金融機関は他の銀行の融資状況を気にする。融資の申し込みを受けた会社に対して、他の銀行がどれくらい貸しているか、どんな方法で貸しているかを確認する。その際、プロパー融資を受けていると信用度が上がる。

     

    「あの銀行がプロパーで貸しているなら、この会社に貸しても大丈夫だろう」

     

    そう判断される可能性が高くなり、融資が受けやすくなる。その第一歩として、どの金融機関でも良いのでプロパー融資を受ける。

     

    なにも言わずに融資を申し込むと保証付融資になるので、借りる際に「プロパーでお願いしたい」と伝える。

     

    断られるかもしれないが、お願いすることが大事。少額でもいい。1件でもいい。プロパー融資で借りる実績を作ることが重要だ!

    銀行評価を高める損金処理の裏ワザ

    融資を受けたい。銀行などの金融機関の評価を上げたい。方法はいろいろある。その一つが、損金の処理を工夫すること。

     

    例えば、中小機構の経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)に加入するとする。これは、取引先の倒産によって連鎖倒産や経営難に陥るのを防ぐためにある制度。掛金は月5000円から20万円の間で設定でき、掛金を損金(個人事業主の場合は必要経費)にできる。

     

    さて、この掛金をどこに入れるか。一般的には、保険料として損金に算入し、損益計算書の経費に含めることが多い。倒産による影響を抑える保険であるから、この処理でもまったく問題はない。

     

    ただ、経費ではなく、保険積立金として資産(計上)にもできる。経営セーフティ共済に加入しておくと、取引先の倒産などによって経営難に陥った時に、掛金の10倍(上限8000万円)まで借入ができる。掛金は、そのための積立金の役目を果たしているので、資産として扱うこともできるというわけ。

     

    「どっちでもいいなら経費にしよう」

    「経費にしたほうが節税になる」

     

    そう考える人が多いが、実際はどちらで処理しても税額は変わらない。経費が増えるか、資産計上し法人税の申告書で損金にするかの違いで、税金は一緒。むしろ、決算書の見た目を考えるなら、資産計上したほうが良い。

     

    経費にすると利益が減る。資産計上し法人税の申告書で損金にすると利益は多く見える。結果、決算書を見る銀行などの金融機関の評価が上がりやすくなり、資金調達する際に有利になる。

     

    この処理は顧問税理士がちゃんと申告書で処理をしないと損金にならないので注意してほしい。

    融資を受けるなら「銀行の決算1ヵ月前」が狙い目

    ビジネスはタイミングが重要だよね。融資も一緒。例外ではなく、融資を受けやすい時期、受けにくい時期がある。結論から言うと、狙い目は金融機関の決算月。

     

    ほとんどの金融機関は3月決算なので、その1ヵ月くらい前を狙う。一般の企業が決算を気にするように、銀行などの金融機関も決算を気にする。なぜなら、金融機関だって株主がいる民間企業だし、金融庁の目も気になるから。決算の見栄えを良くするために融資実績も増やしたい。そのような心理が働くため、決算前になると、借りられる会社はさらに借りやすい企業になり、借りられるかどうか分からない会社も借りやすくなる。

     

    重要なのは、金融機関の決算月の1ヵ月前の時点で資金繰りに困っていなくても、借りもとあったお金を運用に回すのであれば問題はない。

     

    手元の現金が増えるほど、プラスアルファの利益を狙えるのだ!

     

     

    菅原 由一

    SMGグループ CEO

    SMG菅原経営株式会社 代表取締役

    SMG税理士事務所 代表税理士

     

     

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    ※本連載は、菅原由一氏の著書『激レア 資金繰りテクニック50』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

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