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賃貸人が立退きを拒否…争点は「正当事由」の有無
【住宅借主からの質問】
私は、東京都の杉並区にある木造の平屋建住宅の貸家に住んでいます。昭和34年に建てられたもので、昭和37年から借りている物件で、今は高齢の母と2人で住んでいます。現在は築57年となっていますが、これまで600万円ほど自分たちで増改築をしてきました。賃料は現在月9万2000円です。
大家からは、かなり老朽化していて大地震で倒壊する危険性があること、共同住宅に建て替える計画があるから、と言われ立退きを求められています。
母は現在87歳で、心臓カテーテル手術や大腸がんの手術を受けているなど健康状態も悪く、もし今転居となると肉体的・精神的に負担が大きいです。
それでも、立退かなければならないのでしょうか。
なお、大家からは、立退き料として840万円を提示されていますが、それでも立退きはできないと答えています。
【説明】
本件は、東京地方裁判所令和元年12月12日判決の事例をモチーフにしたものです。
賃貸人が、建物の老朽化・建替えの必要性等を理由として賃借人に対して立退きを求めるというケースは多いですが、この場合はまず、賃貸人側から、賃貸借契約の解約の申入れを行う必要があります。
この解約の申入れを行うことにより、解約申入れ時から6ヵ月を経過すれば賃貸借契約は終了となります(借地借家法27条1項)が、賃貸人から解約の申入れをしたからといって当然に解約が認められるわけでありません。
賃借人が解約を拒んだ場合には、解約の申入れに「正当事由」がなければ、法律上の効力が生じないとされています。
この「正当事由」があるかどうかは、借地借家法28条が
と規定している通り、賃貸人、賃借人それぞれの事情を比較して判断されます。
色々と判断要素はありますが、このなかでもっとも重要なのは
「建物の賃貸人及び賃借人(転借人を含む。以下この条において同じ。)が建物の使用を必要とする事情」
です。
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