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エンプロイアビリティを高め雇用される能力を高める
人事・人材分析の「エンプロイアビリティ」を解説します。エンプロイアビリティとは、英語の「雇用する(Employ)」と「能力(Ability)」と繋げた言葉で、雇用される能力のことを指します。
もともとは米国で、1980年代頃からの事業環境変化を受けて、企業が従業員を長期雇用することが難しくなったため、他社でも通用するような知識スキルを身に付けさせようという考えからでてきた言葉です。
これが、近年日本でも終身雇用が崩れ、企業のリストラなどにより転職を余儀なくされるような事態が起きてきました。そこで他社に移っても通用する能力が求められるようになり、この言葉が使われ始めました。
伝統的な日本企業では、新入社員で入社して、定年まで勤め上げることが前提となっていたため、特定の会社でしか通用しない社員が育っていて、他社に移ったら使えない社員となってしまっているケースが多くありました。
筆者が見聞きした中で多かったのが、銀行員の人たちでした。銀行では昇格できなくなった人たちが、取引先などに紹介されて出向・転籍で行っていましたが、資金繰りはできても経理ができない等、よく送り込まれた側で「使えない」と言われていました。
最近の若い人たちは、手に職をということで公的資格に走る傾向がありますが、必ずしも資格だけでエンプロイアビリティが高まるわけではありません。
厚生労働省の調査研究によると、エンプロイアビリティの能力は次のように定義されています。
A 職務遂行に必要となる特定の知識・技能などの顕在的なもの
(資格などはこれに相当します)
B 協調性、積極的等、職務遂行に当たり、各個人が保持している思考特性や行動特性にかかわるもの
C 動機、人柄、性格、信念、価値観などの潜在的な個人的属性に関するもの
A.B.C. それぞれの能力について他社でも通用する能力を身につける必要がありますが、逆に身に付けた事により転職がしやすくなり、転職者を増やすリスクもあります。
また、BやCの要素が不足するために他社に行っても定着できない社員もいます。
コンサルや研修で日本の企業とお付き合いをしていると、人材育成が不足していることを痛感します。日本では長らくOJTといって、On the Job Trainingで人を育てるとされてきましたが、実際には業務経験を積ませているに過ぎません。このため、業務経験だけで学べないことは、部長クラスになっても学ばないまま来てしまうケースが多いのです。
このため意識の高い人は、最近国内のMBAコースに通う人が多いですが、MBAで学ぶことも、先程のエンプロイアビリティの分類でいうと、Aのカテゴリーの知識・スキルが身につくだけですから、MBAという箔はつきますが、BやCが身に付くわけではないので、MBAは万能ではありません。
本当の意味でのエンプロイアビリティを高めるには、仕事を通じてリーダーシップを発揮して、困難を乗り越えながら何事かを成し遂げる経験をさせることが重要です。
エンプロイアビリティを高めるには、何かを完遂する経験を積ませること