(※写真はイメージです/PIXTA)

日本企業では人材が不足していると指摘されています。これまでOJTで人を育てるとされましたが、実際には業務経験をつませているに過ぎません。業務経験だけで学べないことは、部長クラスになっても学ばないままのケースが多く、国内外のMBAで学んだ社員が入社しても活躍の場は与えられにくいといいます。

グローバル人材育成は、日本人と現地人の両面で

人事・人材分析の「グローバル人材育成」を解説します。、国内の少子高齢化により、従来ドメスティックだった業種でも成長の機会を得るために海外に進出する会社が多く出てきています。

 

海外に出て仕事をするために、まず英語力が言われますが、翻訳・通訳の問題は、今後AI技術の進歩により、やがては克服される可能性がありますから、それよりも重要なのは仕事をする能力です。

 

日本人として海外に出て行って仕事をすることを考えると、まず念頭に置かなければならないのが、「ローコンテキス社会」への適合ということです。ローコンテキストと対になっている言葉は、「ハイコンテキスト」で、日本社会のような、「あうんの呼吸」で通じる社会です。日本は世界で希にみるハイコンテキス社会なのです。

 

「男は黙ってサッポロビール」というCMのフレーズに見られるように、寡黙であまり喋らなくても意思が通じることを良しとします。「忖度」という言葉も、目下の人が目上の人が言葉に出して求めなくても、期待していることを推し量って、目上の人に良かれと思って事を行うことをいいます。

 

これに対して、海外は日本に比べるとずっとローコンテキスト社会ですから、何から何までいちいち言葉にして話をする必要があります。国内では、言わずもがなで当たり前のことも、海外に行ったらいちいち説明しなければなりません。そういう、自分たちが当たり前だと思っていることを、海外の人に分りやすい言葉で説明できる力が求められます。

 

特に、日本から海外に進出して現地で生産・販売を行うような場合は、日本でのやり方や考え方等を現地の人に分かる言葉で説明できる必要があります。

 

日本人のグローバル人材育成は、(1)若年層は、若い頃から海外経験を積んで、ローコンテキスト社会に慣れさせ、(2)ミドル層になったら、国内にいるときよりも仕事と責任範囲を広げ、異文化組織下でのマネジメント経験を積ませ、(3)トップ層になると、現地法人のトップとして、現地法人の成長と発展を担える人材となれるように、3階層位で長期的な育成を考えるといいでしょう。若いうちから海外経験を積ませることで有名な会社としては、ミネベア・ミツミがあります。入社後2年程度経過したら、もう海外赴任させられます。

 

また、現地の人材の採用・育成ということで考えると、向こうでは日本の若者以上に転職が当たり前ですから、人の採用のみならず、仕事のやらせ方も、別の人で置き換え可能なように仕事をアサインする必要があります。

 

一方で、会社に対するエンゲージメントが高い人材も中には一定程度はいますから、そうした人材を幹部候補として育成していくことも考えていかなければなりません。

 

かつて中国で日本製品排斥デモがあった際に、中国人幹部を育成していた会社は、デモや打ち壊しに参加しないようにその幹部が社員に呼び掛けたので、参加しなかったそうです。

 

日本企業の中には、海外の現地法人のトップも現地の人たちに任せようとする会社もあります。建設機械のコマツ等はその例で、その代わりに、現地の幹部に徹底してコマツウェイ(コマツ流の仕事のやり方・考え方)をたたき込んでいます。

 

ポイント
グローバル人材育成は、日本人と現地人の両面からアプローチする

 

井口 嘉則
株式会社ユニバーサル・ワイ・ネット 代表取締役
オフィス井口 代表

 

 

※本連載は、井口嘉則氏の著書『事業計画書の作り方100の法則』(日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋・再編集したものです。

事業計画書の作り方100の法則

事業計画書の作り方100の法則

井口 嘉則

日本能率協会マネジメントセンター

経営環境が激変する最悪シナリオを乗り切る「事業計画書」の立て方・作り方とは? 「ビジョン・戦略立案フレームワーク」で何を/どの段階で行うかがわかる“これからの”実践教科書。 コロナ禍にあっても、事業計画の立…

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