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日本的組織「タテ社会」の特徴を押さえて対処せよ
(1)日本的組織の特徴は「タテ社会」
日本人が作る組織は、ほっておくと「タテ社会」になります。「タテ社会」というのは、文化人類学者の中根千枝さんが提唱した言葉ですが、上下の関係が強く、横の関係が弱い社会です。底辺のない二等辺三角形ともいいます。会社でいうと、社長をトップに、その下に役員、さらに部長、課長、係長、課員と序列をなしますが、下が上に従うという形態で組織が形成され、動きます。
しかし横同士の関係は弱く、縦系列が中心の組織となります。このため、横の課や、横の部、部門との関係は希薄になります。これがよく言う組織の壁です。上の人から見ると下の人たちは同じ部下で対等のように思いますが、部下同士は上司から良く思われようと、ライバル関係になりますから、コミュニケーションが希薄になります。上も下同士で結託されたくないので、微妙にけん制合いをさせます。
また、課レベル位の小さな組織になると、課長という小集団のリーダーに従うことを重視し、ルールよりもリーダーの意向に従うことを大切にします。日本人の社会は、基本的には人治主義で法治主義ではありませんから、リーダーが右と言えば右、左と言えば左を向くわけです。ですから、リーダーに従わない人が出てくると、リーダーは困るので、よそに飛ばしたります。
よくコンプライアンス違反が起きるのは、このようなリーダーが、ルールを冒してまで何かをしたいケースです。例えば不正をしてでも予算を達成して、上に良く思われたいというようなケースです。
(2)組織構造や組織の運営方法
組織の設計や改編を行う際には、このタテ社会ということを念頭においておく必要があります。組織の基本は、職能別組織で、営業や開発、製造、購買、管理等の機能別組織を形成します。職能別組織のメリットは、職能の専門性と効率性が高まるということですが、職能間の壁ができやすいため、ある程度以上の規模になると、製品群等の事業単位でくくった事業部制を取ります。事業部制のメリットは、事業部長をトップに、事業部最適の意思決定を行えることですが、デメリットとして事業部間に壁ができることです。
その他、カンパニー制やマトリックス組織、純粋持ち株会社等組織規模が大きくなるといろいろな形態がありますが、基本的な考え方は同じです。
ただ、万能な組織はないので、その時々の企業や事業の発展段階や事業環境に応じて、組織構造を改編します。
タテ社会では、組織間の壁ができやすいことを念頭に、横串機能を入れるとか、組織間調整の連絡会議を設ける等、組織間の調整機能を機能させるようにします。
自動車業界では、トヨタ自動車やホンダ等がグローバル展開でも成功していますが、いずれも、この日本的なタテ社会のデメリットを相殺するような仕掛けを組み込んでいます。トヨタは、「なんでも共有」、ホンダは上下を気にしない「ワイガヤ」等がその例です。
日本的「タテ社会」の特徴を理解した組織設計・運用設計を