(※写真はイメージです/PIXTA)

中小企業には大卒はなかなか入社してくれないと経営者は嘆きます。地域が疲弊すると、そこに足場を置く企業も疲弊します。そうならないように地元の子供を採用し、地域が元気になるように努力する責任が中小企業経営者にはあるという。中小企業はどんな取り組みをしているのでしょうか。

知識の向上ではなく、人間力の向上

現在、新入社員対象の研修を実施していないのは47同友会中1同友会のみ。入社2~3年から経営者までの研修を行っているところも(一部の段階が欠けているにしても)37同友会に及んでいる。こうした数字を見ても、各地の同友会がいかに人材教育・育成に熱心に取り組んでいるかが理解できるだろう。

 

これら同友会の中でも、共同求人・合同入社式の元祖とされる北海道同友会などと並んで、社員・幹部教育に最も積極的で活動も先進的だと、最近ことに評価が高まっているのが岡山同友会である。

 

この日の倉敷校での「社員共育大学」第3講は「様々な視点でモノを捉える」とのテーマで、田中製作所社長の門田悦子氏が40分ほど問題提起の講話を行い、その後、経営者と社員が7グループに分かれて討論し、グループごとに感想や疑問等をまとめて社員の一人が発表。最後に講師が質問に答え、あらためて自分なりの考えを述べるという形で進行した。時間は2時間ほど。

 

門田氏は元看護師で、病院勤務ののちフリーランスの看護師として働いていたが、創業者の父親が死去、社業を手伝うようになった。その後一時迷いもあったが、社員と手を携えて会社をよくしていこうと決意、社長に就任した。いまは「地域に必要とされる金属加工業者として存在し続ける」ことを経営指針として、日々努力を続けているという。毎回、「社員共育大学」冒頭の問題提起は、門田氏と同様の多彩な経験を持ち、それなりの実績を上げている経営者が行う。

 

学生時代から看護師を経て、経営を担うようになった現在までを、門田氏は講話のテーマに沿って、エピソードを交えながら興味深く語った。

 

受講生たちは彼女の話を聞きつつ、テーマに即して自らの思考をまとめ、その後の経営者を含めたグループ討論で自らの考えを話す一方で、他の出席者の多様な受け止め方、考えを知り、自らの思索を深めるとともに豊かなものにしていく。毎回終了後、所定のフォーマットでレポートの提出が義務付けられており、否応なしに真剣に講話を聞き、グループ討論に参加せざるをえない。

 

岡山同友会事務局長の安本直一氏によると、「社員共育大学」の目的は全8回にわたる講座を通じて、仕事とよりよく生きることの関係を共に考えること、自社の持ち味を再認識し自分の役割や責任を考えること、人の話を聴く力や自分の意見をまとめて表現する力や討論の力を養うこと、そして多くの他社の社員との交流により新しい仲間づくりをすることなどだという。

 

つまりこの社員共育大学の主たる目的は外部のセミナーなどで得られる一般的知識やテクニカルな知識の向上ではなく、人間力の向上にあると言っていいだろう。

 

清丸 惠三郎
ジャーナリスト
出版・編集プロデューサー

 

 

※本連載は、清丸惠三郎氏の著書『「小さな会社の「最強経営」』(プレジデント社、2019年10月刊)より一部を抜粋・再編集したものです。肩書等は掲載時のまま。

小さな会社の「最強経営」

小さな会社の「最強経営」

清丸 惠三郎

プレジデント社

4万6千人を超える中小企業の経営者で構成される中小企業家同友会。 南は沖縄から北は北海道まで全国津々浦々に支部を持ち、未来工業、サイゼリヤ、やずや、など多くのユニークな企業を輩出し、いまなお会員数を増やし続けて…

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