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父の相続時にゲンナリした、妹の「わがままっぷり」
今回の相談者は、60代の会社経営者の榎田さんです。大学卒業後は大手企業に就職しましたが、その後、経験を活かして起業し、成功しました。会社員時代に結婚した妻はずっと専業主婦として家事全般を引き受けてくれるほか、同居している母親の面倒も見てくれています。
経営者として成功している榎田さんに生活の不安はないように見えますが、1点だけ懸念していることがあります。それは、わがままで手の付けられない妹の存在です。
榎田さんの父親は数年前に亡くなったのですが、遺産相続の際に妹のわがままが爆発。複数の収益不動産のほか、株や預貯金のほとんどを相続すると主張し、榎田さんと母親が折れました。榎田さんが相続したのは自宅、母親はごくわずかの預金です。とはいえ、収入が高い榎田さんの生活には大きな問題とはなりませんでした。
「昔からわがままで気が強く、手がつけられませんでしたが、父親の相続時には大変な思いをしました。しかし、これから先、私が先に亡くなったら、妻は妹にどれほどつらい思いをさせられるかと思うと…」
妻が妹に対抗できるよう「遺言書」で準備
榎田さん夫婦は子どもがいません。そのため、高齢の母親が亡くなれば、榎田さんの相続人は妻と妹のふたりです。妹の性格上、必ず財産の請求をしてくるはずなので、妻が妹に対抗できるよう「自分の全財産を妻に」という遺言書を残したいと考えています。
そこで、次のような遺言書を作成しました。
遺 言 書
遺言者 榎田正夫は下記のとおり遺言する。
第1条 遺言者は、遺言者の有する下記の不動産のほか預貯金を含む全財産を、遺言者の妻・真理子に相続させる。
【土地】
所在 東京都〇〇区〇〇一丁目
地番 〇〇番〇〇
地目 宅地
地積 〇〇㎡
【建物】
所在 東京都〇〇区〇〇一丁目
家屋番号 〇〇番〇〇
種類 居宅
構造 木造スレート葺2階建
床面積 1階 〇〇㎡
2階 〇〇㎡
第2条 遺言者は、本遺言の執行者として、妻・真理子を指定する。
2 遺言執行者は、不動産の名義変更等、本遺言を執行するために必要な一切の権限を有する。
3 遺言執行者が任務遂行に関して必要と認めたときは、第三者にその任務を行わせることができる。
付言事項
妻・真理子には、私の両親や姪に至るまで面倒を見てもらい、心から感謝している
令和〇〇年〇月〇日
〇〇市〇〇町〇〇
遺言者 榎田正夫
また、息子夫婦からサポートを受けてきた榎田さんの母親も、自分の財産は榎田さんに相続させたいということで、同じタイミングで公正証書遺言を作成することになりました。
【対策と注意点】
子どもがいない夫婦の場合、親あるいは兄弟姉妹も相続人になる点に注意。
自分が築いた財産でも、遺言がないと配偶者に全部相続させられない。
子どものいない夫婦の場合、遺言があれば兄弟姉妹と話し合うことなく相続の手続きが行えます。兄弟姉妹には遺留分の請求権がないため、感情的なもめごとに発展しにくいといえるでしょう。また、もし共有の不動産がある場合は、早い段階で解消しておいた方が安心です。
※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。
曽根 惠子
株式会社夢相続代表取締役
公認不動産コンサルティングマスター
相続対策専門士
◆相続対策専門士とは?◆
公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。
「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。
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