(※写真はイメージです/PIXTA)

ひとり暮らしの高齢父が施設へ。すると、末っ子の妹が父の入所先へ足しげく通い始めます。姉が思い起こしたのは10年前の母親の相続のこと。いつの間にか妹だけが有利な遺産分割になっており、納得できない思いです。父の相続時にも同じことが起こったらと思うと、いてもたってもいられません。どうすればいいのでしょうか。相続実務士である曽根惠子氏(株式会社夢相続代表取締役)が、実際に寄せられた相談内容をもとに、生前対策について解説します。

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    独居の80代父、転倒がきっかけで介護施設へ

    今回の相談者は、50代の看護師の川村さんです。80代半ばとなり、施設へ入所した父親の、将来の相続について不安があると、筆者のもとに訪れました。川村さんの母親は10年前に他界。それ以降、父親はひとり暮しをしていました。ところが去年、父親は浴室での転倒がきっかけで足腰が不自由になり、現在は介護施設に入所しています。

     

    川村さんは長女で、きょうだい構成は兄と妹の3人です。川村さんの兄は父親の土地を借りて歯科医院を開業しており、将来、兄が実家の土地を相続することは家族の合意が取れています。川村さんと妹はともに独身の看護師で、就職のために実家を離れて以降、それぞれ仕事に打ち込んできました。2人とも自宅は賃貸マンションです。

    なぜか妹が、いちばん「おいしいところ」を…

    川村さんは、最近の妹の行動に不信感を持つようになりました。もとをただせば、母親が亡くなったときの相続が原因です。

     

    母親は、土地持ちの祖父から相続した大きな貸家を所有していました。実家の土地より立地がよく、評価も高いものです。

     

    母親が亡くなったとき、相続の手続きは父親が行いましたが、ふたを開けてみると妹が非常に優遇されるかたちとなっており、いちばん価値のある貸家も、なぜか父親ではなく、妹のものになっていました。

     

    川村さんは、別の土地を相続しましたが、立地が悪く持て余している状態です。将来そこに住むなど、とても考えられません。

     

    妹が相続した貸家の評価額は、川村さんが相続した土地の10倍以上で、潤沢な家賃収入もあります。ひるがえって川村さんの土地は、固定資産税と夏の草刈りの費用が必要です。

    父の重要書類を持ち去り、勝手に管理

    兄から聞いた話によると、このところ妹は、たびたび父親の施設を訪れているそうです。

     

    「母親の相続のときのように、妹のいいように画策されているのではないかと思うと、いてもたってもいられなくて…」

     

    川村さんは気が気ではないといいます。

     

    「空家になっている実家に行ったら、父親の机の引き出しや書類入れはすべて空っぽなんです。恐らく妹が持ち出したんだと思います。いまから銀行口座やクレジットカードの状況を確認する方法はあるのでしょうか?」

     

    父親は施設に入所して以降、認知症の兆しが見えはじめたことから、印鑑カードや保険証なども妹が管理していると、兄から聞きました。

     

    本来であれば、実家のそばに暮らす兄が公平な財産管理をすればいいのでしょうが、川村さんが話を持ち掛けても面倒がっているのが明らかで、まったく頼りにできません。

    きょうだい間でもうやむやにせず、しっかり自己主張を 

    筆者からは、いますぐ、今後の父親のサポート体制のほか、資産内容をきょうだい間で共有・確認することをお勧めしました。生前であるため、本人もしくは本人の委任状により、取引の確認をしておくようにします。

     

    さらに、将来的なもめごとを回避するため、母親の相続時の遺産分割も含め、公平な遺産分割案を作成し、父親に公正証書遺言を残してもらうことが望ましいといえます。

     

    もしこの対策がうまく進まない場合は、財産管理のため、父親に後見人を立てることも検討するよう、あわせて提案しました。

     

    きょうだい同士助け合うのが理想ですが、現実はなかなか思い通りにはいかないものです。川村さんの今後の人生のためにも、妹と自分の立ち位置に線引きをしつつ、争いを起こさないよう、賢く立ち回ることが必要です。

     

     

    【対策と注意点】

     

    両親の財産をすべて合算したうえで、公平な遺産分割をすることが大切。

    親の資産状況について、きょうだい間での共有は必須

     

    だれもがきょうだいとの争いは避けたいはずです。しかし、不満や不信感を抱えたまま付き合い続けることはむずかしいでしょう。自身の中で譲れる点・譲れない点をしっかりと線引きし、決断することも大切です。

     

     

    ※プライバシーに配慮し、実際の相談内容と変えている部分があります。

     

     

    曽根 惠子
    株式会社夢相続代表取締役
    公認不動産コンサルティングマスター
    相続対策専門士

     

    ◆相続対策専門士とは?◆

    公益財団法人 不動産流通推進センター(旧 不動産流通近代化センター、retpc.jp) 認定資格。国土交通大臣の登録を受け、不動産コンサルティングを円滑に行うために必要な知識及び技能に関する試験に合格し、宅建取引士・不動産鑑定士・一級建築士の資格を有する者が「公認 不動産コンサルティングマスター」と認定され、そのなかから相続に関する専門コースを修了したものが「相続対策専門士」として認定されます。相続対策専門士は、顧客のニーズを把握し、ワンストップで解決に導くための提案を行います。なお、資格は1年ごとの更新制で、業務を通じて更新要件を満たす必要があります。

     

    「相続対策専門士」は問題解決の窓口となり、弁護士、税理士の業務につなげていく役割であり、業法に抵触する職務を担当することはありません。

     

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    本記事は、株式会社夢相続のサイト掲載された事例を転載・再編集したものです。

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