2050年の東京は、煌(きら)びやかな現代風デザインの建物と、老朽化したマンションが混在する街になる……しかし、管理組合にその気さえあれば、醜く朽(く)ちるのではなく、味わい深く成熟させるような装いを外観に施し続けることも可能ではないかと、住宅ジャーナリストの榊淳司氏はいいます。「代官山ヒルサイドテラス」を例に、これからの街づくりで目指すべき姿をみていきましょう。

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築何百年の建物が残るヨーロッパから学ぶべきこと

タワマンは東京にとって厄介な存在である。しかし、普通のマンションはそれほどでもない、とも私は思っている。

 

ヨーロッパの街を歩くと気づくだろう。旧市街には築何百年にもなる建物が残っている。いや、残されていると言うべきだろうか。そのほとんどは、今でも使用されている。

 

東京の街がヨーロッパの古い都市のようになるとは思えないが、ヨーロッパ人たちのやり方は大いに参考になると思う。

 

私は東京の街を34年ほど眺めてきたが、1990年頃から建物の作り方がかなりあか抜けてきたように思える。特に2000年頃からだと、建築スタイルのモダニズムは「今とほとんど変わらない」という印象を持つ。造りもしっかりしている。その頃からバリアフリーということも、盛んに言われ始めたと記憶している。

 

2050年の東京にも、こうした建物はしっかりと残っているはずだ。特に近郊エリアでは、ほとんどがそのままではないか。

 

東京の街にあるオフィスビルや商業ビル、あるいは賃貸マンションは、老朽化すると順次建て替えられていく。中には地上げがうまくいって、以前よりも姿の良い建造物に生まれ変わるものもあるかもしれない。その中で、区分所有のマンションの多くはただ老朽化していく。

 

その結果、2050年の東京は、煌(きら)びやかな現代風デザインの建物と、老朽化したマンションが混在する街になっている。

 

老朽化したマンションは、そのままだと美しくない。むしろ日々醜くなっていくはずだ。それでも管理組合にその気さえあれば、醜く朽(く)ちるのではなく、味わい深く成熟させるような装いを外観に施し続けることも可能ではないか。それがうまくいっているマンションなら、資産価値もそれなりに評価されるはずだ。なぜなら、多くの人がそこに「住みたい」と考えるからだ。

 

鉄筋コンクリート造りの建物は、丁寧にメンテナンスを施せば100年程度は使えると言われている。あるいはもっと長く使えるかもしれない。建て替えが困難なら、100年でも200年でも建物を保存するつもりでメンテナンスを続ける、という選択肢があるはずだ。

 

現代の日本人は新しいモノはイコール美しくて、古いモノは醜い、という固定観念が強すぎる。それに対して欧米では、古いモノには価値がある、という考え方がしっかりと息づいている。

 

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※本連載は、榊 淳司氏の著書『ようこそ、2050年の東京へ』から一部を抜粋・再編集したものです。

ようこそ、2050年の東京へ

ようこそ、2050年の東京へ

榊 淳司

イースト・プレス

東京にとって1960年から90年は、「高度経済成長」による拡大・発展の30年間だった。それから現在までは「失われた20年」を経て、停滞する30年間を過ごした。では、成長を期待できない日本において、首都・東京が歩むこれからの…

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