アベノミクスや東京オリンピックの開催決定などを背景に価格上昇を続けてきた東京不動産。特に、都心エリアの住宅、マンション価格はバブルの域に達しているのではないかと警戒している人も少なくありません。しかし、住宅ジャーナリストの榊淳司氏は、港区や千代田区など人気エリアの不動産価値について強気の見解を示しています。その理由をみていきましょう。

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港区や千代田区の不動産価値は変わらない

2050年の東京では、多くの人々は仕事のために東京やその近郊に住む必要はない。

 

しかし、東京の街には強烈な魅力がある。その魅力をたっぷりと味わうために、あえて東京の都心部に住みたい、と考える人は多いはずだ。つまりは、東京の街で享楽的な暮らしをする「ボヘミアン」たちの住宅への需要は根強い。

 

あるいは、東京の都心やその近くに住むことによって、少しでもビジネスを有利に展開したいと考えるような人は、積極的に東京に住む。新しい事業を始めたいと考える人や、少しでも所属する会社内で高い地位に昇りたいという意欲のある人は、東京に住んで仕事にまい進するだろう。つまりは2050年スタイルの東京「ワーカホリック」のようなタイプだ。

 

そういった需要があることで、東京の都心部である港区や千代田区の不動産価格は、2020年時点と比べてさほど変わらないのではないかと予測する。ボヘミアンは親の代からの富裕層に多いだろう。ワーカホリックはたくさん稼ぐので、千代田区や港区に住むことで発生する高めの住居費もさして苦にならない。

 

もちろん、その間にデフレやインフレがあれば表面的な数字上の変化は生ずるが、もっと普遍的な指標で計った場合の価値はあまり変わらない。

 

もう少し、わかりやすく説明しよう。

 

例えば、2018年の日本の1人当たりGDPは約433万円である。2020年時点の東京都港区(山手線内)における築10年程度の中古マンションの坪単価に近い。

 

2050年に円という通貨の価値が変動して、表面的な価格が多少変動したとしても、港区の中古マンションの坪単価基準は、円換算の1人当たりGDPに近い額になっているように思う。つまり、港区の人気エリアにおけるマンションの相対的な価値は、2050年時点でも維持されているということだ。

 

新宿区や千代田区(山手線内)といった都心エリアのマンションも、今ほどではないが相対的な価値は維持できると思う。

 

新宿と千代田区エリアは、東京に住むことに対して強いモチベーションを宿しているボヘミアンやワーカホリックが住みたがるところだ。中古マンション価格のレベルを言えば、1人当たりGDPの7割から9割のラインである。現在の貨幣価値で言うのなら、303万円から390万円くらいであろうか。それが2050年頃、新宿区や千代田区中古マンション価格の基準になるのではないか。

 

ただこの両区とも、場所によって価格がかなり異なるところがあることに注意したい。千代田区なら、人気の高い番町エリアは港区並みの価格を維持する。山手線の外側になると価格がやや落ちる。

 

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※本連載は、榊 淳司氏の著書『ようこそ、2050年の東京へ』から一部を抜粋・再編集したものです。

ようこそ、2050年の東京へ

ようこそ、2050年の東京へ

榊 淳司

イースト・プレス

東京にとって1960年から90年は、「高度経済成長」による拡大・発展の30年間だった。それから現在までは「失われた20年」を経て、停滞する30年間を過ごした。では、成長を期待できない日本において、首都・東京が歩むこれからの…

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