建て替え資金がありません…「東京・郊外マンション」に待ち受ける悲惨な末路

人口減少、少子高齢社会……日本が抱える深刻な諸問題は、首都東京でも例外ではありません。「高度経済成長」「失われた20年」を経て、30年後の東京はどのように変化するのでしょうか。東京の未来を予測していくなかで、東京の郊外に建つマンションが抱える問題がみえてきました。

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「建て替え」におけるオフィスとマンションの違い

東京は近代都市となって初めて収縮するのだ。収縮には痛みがともなう。そして最も痛みを感じるカテゴリーは、他ならぬ区分所有のマンションなのだ。

 

オフィスビルというのは、古くなったら建て替えればいい。これは実に簡単な話である。

 

ところが、分譲マンションはそう簡単に建て替えられない。理由は、オーナーが何人もいるからである。

 

オフィスビルや賃貸マンションというのは、基本的にワンオーナーである。持ち主が1人、あるいは1社なのだ。複数の場合でも、せいぜい数人か数社。そのオーナーが「建て替える」という意志を持てば、あとは資金だけの問題となる。

 

仮に、そのオフィスビルや賃貸マンションの立地が、都心や近郊の不動産的評価として1等地であった場合、銀行が喜んで建て替えの資金を貸してくれる。もちろん土地を担保に差し出さなければならないが、それでもマンションに比べれば建て替えは容易である。

 

それが、マンションの場合はそんなに簡単ではない。簡単でないどころか、かなり難しい。そして、日本中の95%以上のマンションは、現行法上では実質的に建て替えは不可能なのだ。

 

こう書くと、多くの人は不思議に思われるだろう。東京の都心を歩けば、新しく建て替えられているマンションがいくつもあるではないか、と考える人がいそうだ。

 

しかし実際のところは、2020年の4月時点において、全国で建て替えられたマンションは、準備中も含めて300件に満たないのだ。これは国土交通省が把握している全国の旧耐震基準(1981年以前の建築確認基準)のマンションの総数である約104万戸に比べると、ほんのわずかでしかない。東京の街角で見かける建て替えられたマンションは、非常に幸運な300事例未満の中の1つなのだ。

 

では、なぜマンションが老朽化しても建て替えられないのか。簡単に説明しよう。

 

日本は私有財産をかなり強力に守る国である。これは日本国憲法第29条で明記されている。よほどの公益的な理由がない限り、この国では国民の持つ私有財産権を制限することはできない。

 

マンションの区分所有権も立派な私有財産権に当たる。高いお金を払って購入した(区分所有権を得た)マンションの住戸は、私有財産として制度的にしっかりと守られている。

 

ところが、マンションは鉄筋コンクリートで作られた頑丈な建物ながら、必ず老朽化する。建物ができて何十年も経過すると、日常の生活に支障をきたすほどに老朽化する場合もある。そうなると、区分所有者の多くは「建て替えたい」と考えるようになるはずだ。

 

マンションを建て替える場合、最も大きな問題はお金である。要するに、建て替える資金を誰が出すか、という問題だ。

 

住宅ジャーナリスト

1962年、京都府生まれ。同志社大学法学部および慶應義塾大学文学部卒。1980年代後半から30年以上、マンションの広告・販売戦略立案に携わる。その経験を生かし、購入者側の視点に立ちながら、日々取材を重ねている。著書に『マンションは日本人を幸せにするか』(集英社新書)、『マンション格差』(講談社現代新書)、『すべのマンションは廃墟になる』(イースト新書)などがある。

著者紹介

連載人気住宅ジャーナリストが分析!土地・不動産価値の観点からみる「未来の東京」

※本連載は、榊 淳司氏の著書『ようこそ、2050年の東京へ』から一部を抜粋・再編集したものです。

ようこそ、2050年の東京へ

ようこそ、2050年の東京へ

榊 淳司

イースト・プレス

東京にとって1960年から90年は、「高度経済成長」による拡大・発展の30年間だった。それから現在までは「失われた20年」を経て、停滞する30年間を過ごした。では、成長を期待できない日本において、首都・東京が歩むこれからの…

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