2019年10月、関東から東北にかけて大きな被害をもたらした台風19号……このとき、テレビのワイドショーでは武蔵小杉で被災したタワマンの話題が取り上げ続けられました。住宅ジャーナリストの榊淳司氏がテレビのディレクターにワケを聞いたところ「やっぱり“ムサコマダム・ザマー”じゃないでしょうか」との返答があったといいます。タワマン住民が地元に住む人々から嫌われるのはなぜでしょうか、みていきます。

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タワマン住民は「自宅の資産価値ばかり気にする人々」

品川区に武蔵小山という街がある。JR山手線も乗り入れる「目黒」駅から東急目黒線で2駅。駅から続く商店街が賑わっていたが、地味な印象はぬぐえない街だった。

 

その駅前の商店街に今(2020年10月時点)、ここ2年で2棟目となる巨大なタワマンが完成しつつある。いずれも駅前の再開発である。この2棟のタワマンによって、武蔵小山の街の風景は以前からガラっと変わってしまった。

 

実はこういうケースは多い。東京に限らず大阪でも、商店街のど真ん中にいきなりタワマンが開発されている事例をいくつも見かけた。ひたすら寂れていくよりも、真新しいタワマンが開発されて新しい住民たちが転入して来ることは、それほど悪くはないのだろう。

 

しかし、新たにやって来たタワマンの住民たちが、旧来の街に溶け込むことはなさそうだ。

 

神奈川県の川崎市には、武蔵小杉という街がある。元々は工場労働者の街だったが、十数年前からタワマンが林立し始めた。今では十数棟が立ち並び、今後も増えていく見通しだ。

 

私は2019年に出した『限界のタワーマンション』(集英社新書)の取材で、武蔵小杉に元から住む方々に話を聞いたことがある。彼らのタワマン住民たちに対する印象は、「自分のマンションの資産価値ばかりを気にしている人々」というものだった。

 

地域のイベントを開くと、タワマンからの参加者もやっては来るという。特に子どもたちは楽しんでくれる。しかし、親たちが運営側に対して積極的に参加する姿勢は、ほとんど見られないらしい。

 

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※本連載は、榊 淳司氏の著書『ようこそ、2050年の東京へ』から一部を抜粋・再編集したものです。

ようこそ、2050年の東京へ

ようこそ、2050年の東京へ

榊 淳司

イースト・プレス

東京にとって1960年から90年は、「高度経済成長」による拡大・発展の30年間だった。それから現在までは「失われた20年」を経て、停滞する30年間を過ごした。では、成長を期待できない日本において、首都・東京が歩むこれからの…

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