飯田屋でもっとも売れているおろし金は「楽楽おろしてみま専科 極み」。

「売れない商品」は本当にあるでしょうか。商品が売れずに廃業寸前まで追い込まれた経験を持つ飯田屋6代目店主は、「ない」と答えます。「売れない商品」なのではなく、「売れない売場」があるのだと語ります。※本連載は飯田結太氏の著書『浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟』(プレジデント社)を抜粋し、再編集したものです。

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そもそも「売れない商品」は本当にあるのか?

そもそも「売れない商品」とは、本当にあるのでしょうか。

 

商品が売れずに廃業寸前まで追い込まれた経験からいうと、「ない」というのが僕の結論です。「売れない商品」なのではなく、「売れない売場」があるだけです。

 

飯田屋でスター商品として活躍してくれながら、一般的には売れないために、残念ながら廃番になってしまう商品があります。

 

廃番が決まるたびに、手足をもがれるような思いがします。おそらく飯田屋は、この業界でもっとも未来の廃番商品を抱えている店でしょう。

 

なぜ、こんな悲劇が起こるのでしょうか。飯田屋の買い支える力が及ばないことを悔しく思いますが、生意気を言えば、商品のよさを伝える努力を怠っている店が多いことも原因です。

 

「売りやすい商品」は、置いておくだけで勝手に売れていきます。商品説明する手間も人件費もかかりません。商売するには好都合で、誰でも取り扱いたくなります。もちろん、飯田屋もその恩恵に与っています。

 

一方で、説明をしなければ魅力が伝わりにくい商品は「売れない商品」として扱われがちです。しかし、その中にこそ宝が眠っています。

 

価格は5500円と高価で、サイズが大きいことから簡単には売れない商品だったという。
価格は5500円と高く、サイズが大きいことから簡単には売れない商品だったという。

 

 

飯田屋でもっとも売れているおろし金は、新潟県三条市にあるアーネストの「楽楽おろしてみま専科 極み」です。メーカーからは、販売不振で廃番の宣告を受けていた商品です。

 

5500円と高価で、サイズが大きいことから簡単には売れない商品でした。しかし、おろし金を使い比べてみたところ、ほかとはレベルが違うくらいふわふわで軟らかな食感になることがわかりました。

 

一人目の神様が僕に授けてくれた逸品です。

 

その経験から、「この食感を求めている方にしっかりと伝われば、高くても売れるはずだ」という確信がありました。そこで、「生まれ変わっても、もう一回使いたい!」とPOPを付け、「おろし金界のベンツ」と名づけてアピール。もちろん接客でも食感の特長や、使用方法などをきちんとお伝えするようにしました。

 

すると、購入したお客様の感動の声がクチコミでみるみる広がっていきました。その結果、飯田屋だけでなく全国で売れはじめ、ネット通販でも手に入らないほどの評判となったのです。廃番の危機を乗り越え、スター商品にまで成長したのでした。

 

さらに、今では進化系商品も販売しています。飯田屋に集まったお客様の声を基に、もう一回り小さいサイズをつくっていただいたのです。「ふわっとおろしてみま専科」という商品で、さらに多くのお客様に愛される商品に育ちました。

 

このように、世の中にはいい商品にもかかわらず、魅力が伝わらず廃番になってしまうものがたくさんあります。飯田屋では、そんな売れな筋の魅力もしっかりと伝え、出会うべきお客様と道具をつなげたいのです。

 

料理道具は自らがよさをアピールすることはできません。言葉を持たない道具に代わって魅力を伝えるのが僕たちの仕事なのです。

 

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浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

浅草かっぱ橋商店街 リアル店舗の奇蹟

飯田 結太

プレジデント社

効率度外視の「売らない」経営が廃業寸前の老舗を人気店に変えた。 ノルマなし。売上目標なし。営業方針はまさかの「売るな」──型破りの経営で店舗の売上は急拡大、ECサイトもアマゾンをしのぐ販売数を達成。 廃業の危機に…

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