裁判を起こす場合「老朽化の見極め」が重要
この裁判所の判断の肝となったのは、やはり老朽化の程度がそれほど著しくなかったことが原因と考えられます。
老朽化を判断するにあたっては、単に築年数の経過だけでは足らず、実際に倒壊の危険性があることも必要となってきますが、この点についても、裁判所としては、耐震診断における上部構造評点が単に1.0を下回っているだけでは足らず、0.7に近い数字であることが必要であるようにも解釈できます。
このように老朽化の程度が著しいとまで言えない場合には、賃貸人側としてその賃貸物件の使用や処分の必要性についてかなり高度な必要性が認められる必要(単に処分した方が利益があるというだけでは足りないと考えられます)がありますが、賃貸人がその賃貸物件を使用・処分すべき切迫した必要性があるというケースはそれほど多くはないのも実情です。
したがって、賃貸人側として、裁判を起こす場合には、老朽化の程度の見極めが重要であり、これにより立退きの成否が決せられることを肝に銘じて見通しを立てる必要があります。
※この記事は2019年3月4日時点の情報に基づいて書かれています。
北村 亮典
弁護士
こすぎ法律事務所
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