(※写真はイメージです/PIXTA)

「地方を応援する」というモットーのもと創設されたふるさと納税。過度な返礼品合戦が規制されたり、地域格差を生んでしまったりと、度々マイナス面も指摘されています。本件、問題の根はもっと深いようです。 ※本連載は渡瀬裕哉氏の著書『無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和』(ワニブックス)から一部を抜粋し、再編集したものです。

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    自力財政運営を行っているは76自治体だけ

    自分たちが住む地方自治体の政策のあり方を見直すという意味で、ふるさと納税には意味があります。この制度をうまく活かして、自分たちの地元がもっとマトモにならなければいけないという意識改革を行うことができるからです。支援したいと思う自治体に、自ら選んで納税できるのは意義のあることです。

     

    同時に、その選択をするときに衡量されるのは返礼品の内容ではなくて、自身が住む自治体の税の使い方なのです。東京都民は自分の住んでいる自治体があまりにも税の無駄遣いをしているようなら、ふるさと納税を通じて全国各地の名産品を楽しみながら地元行政の改革を促す方法もあり得るかも知れません。

     

    ところで、住民の大勢がふるさと納税で他所の自治体に税を納めてしまっても、政府から補填を受けることのできる自治体にも問題はあります。地方交付税頼みの財政は、その依存性に批判も多い仕組みです。

     

    地方交付税は、対象となる地方自治体が最低限使う金額に対して、税収が足りないと政府が補填する仕組みです。地方自治体は都道府県と市町村の二層構成になっていて、都道府県は47、市町村は1719に及びます。このうち、地方交付税を受けず自力で財政運営を行っている自治体は、令和2年(2020)度時点でわずか76団体です。これらは「不交付団体」という呼び方もされます。

     

    交付を受けている各自治体が最低限使う金額とはいったい何でしょうか。算定根拠となる複雑な数式があり、何十年もの間に計算根拠の微修正がなされています。筆者が以前仕事で調べたときには、何十とある数式のたったひとつの算出根拠(単位費用)を調べただけなのに、何百ページもある専門の歴史書を参照せざるを得ませんでした。しかも、その本は国立国会図書館に行かなければ読めない絶版書になっています。

     

    要するに、算出根拠が誰にも直ぐに分からないような状態で、地方交付税は分配され続けているのです。一見、数式にもとづいて合理的に算出されているように見えるだけで、根拠は非常にいい加減です。納税者が納めた税金が適正に使われるためには、こうした複雑すぎて誰も開けようとしないブラックボックス化したものも、見直して改めることが必要です。

     

    ふるさと納税によって全国各地の自治体は地域の特性を生かした収税が可能になったのですから、政府の地方交付税に依存するよりも地方自治体の自立を促していくような制度に変えていかなければいけないのです。

     

    全国の自治体が自立し、各々がきちんとした行政運営を行うことは、日本の民主主義の土台の強化になります。制度が適正に、より良く運用されることで地方自治体が自立し、地方が元気になります。国としてのまとまりを持ちながら自立した地方自治体が全国各地にあるからこそ、日本は強くなれるのです。

     

    渡瀬 裕哉
    国際政治アナリスト
    早稲田大学招聘研究員

     

     

     

    無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

    無駄(規制)をやめたらいいことだらけ 令和の大減税と規制緩和

    渡瀬 裕哉

    ワニブックス

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