(※写真はイメージです/PIXTA)

コロナ禍で保険金の支払いを拒否された老舗企業が倒産の憂き目に遭うなどアメリカの保険業界は揺れています。そんな旧態依然とした保険業界にアマゾンが参入したら、いったいどうなるでしょうか。※本連載は、ダグ・スティーブンス氏の著書『小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」』(プレジデント社)より一部を抜粋・再編集したものです。

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    アマゾンのアレクサが服薬防止に一役?

    ほかにも、アマゾンは、10億ドルを投じてオンライン薬局、ピルパックを買収している。これでアメリカ50州での調剤薬局ライセンスを手中に収めたことになる。アマゾンが食品分野で大規模投資を継続していることも保健・健康増進の分野と自然なかたちで結びつくし、将来的には食品スーパーのホールフーズのような実店舗が高所得者向けのクリニックを併設する場にもなる。

     

    アマゾンは、AIアシスタントのアレクサに改良を加え、ヘルスケア企業間で、セキュリティ対策を講じた患者医療情報の送受信が可能になったと発表している。また、処方指示管理や服薬忘れ防止などにも、アレクサを活用する方針だ。

     

    2020年7月14日、アマゾンは、さらに別の方向からもヘルスケア市場に食い込みはじめた。アメリカの医療サービスグループであるクロスオーバーヘルスと提携を発表したのだ。

     

    アメリカでは従業員が雇用主の保険料負担で民間の保険に加入するのが一般的で、クロスオーバーヘルスでは、アマゾン従業員を対象に医療保険適用クリニックのネットワークを構築する。アマゾンによれば、「ネイバーフッドヘルスセンター」という従業員向けクリニックの第1号をテキサス州のダラス・フォートワース地域に開設し、同地域で働く従業員2万人以上に対応する。

     

    アマゾンが何らかの市場に攻め込むときは、テクノロジーで武装することが多い。ヘルスケアも例外ではない。2020年8月、アマゾンは、「ヘイロー」というリストバンド型の活動量計(モニター画面のないFitbitのような製品)とデータ管理用のサブスクリプションサービスの組み合わせでヘルステック市場に参入すると発表した。

     

    専用アプリは、競合アプリで一般的な各種フィットネス機能に加え、3Dボディスキャナーで体脂肪を可視化したり、声の調子から情緒安定度を判定してストレスレベルを測ったりすることも可能だ。

     

    同じ月にアマゾンのインド法人が、ベンガルール(旧バンガロール)でオンライン薬局サービスの試験運用を開始すると発表した。インドのオンライン薬局市場は、2021年に4倍近くに拡大し、45億ドル規模に発展する見通しだ。

     

    それだけではない。2020年11月には、アマゾンがオンライン薬局を設立し、プライム会員には割引や無料の翌々日配達も提供するとあって、アメリカの競合薬局チェーンであるCVSやウォルグリーン、ライトエイドの株価が急落した。わずか3年間に9つの“駒”を動かしてヘルスケア分野に攻め込んだアマゾンは、早くも業界の老舗企業を崖っぷちに追い詰めつつある。

     

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    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    小売の未来 新しい時代を生き残る10の「リテールタイプと消費者の問いかけ」

    ダグ・スティーブンス

    プレジデント社

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