女性医師に降りかかる「仕事」と「私生活」の負担
男性中心だった医師の世界で、年々女性が活躍し始めています。
厚生労働省「医師・歯科医師・薬剤師統計(2018年)」によると、いまや30代の医師に占める女性の割合は3割を超え、今後もさらにその存在感は高まっていくと予想されています。
一方、そんな女性医師にとって、悩みの種となっているのがライフプラン。キャリアはもちろんのこと、将来のプライベートをどのように充実したものにするか悩んでいる人が少なくありません。
医師としての仕事や役割は男性と同じですが、結婚から出産・育児においては今なお多くの負担が女性に掛かってきます。産休や育休に対する制度面の整備は徐々に進んでいますが、まだまだ周囲の理解やサポートが十分とはいえません。
仕事とプライベートを両立するカギは「30代」
そのため女性医師にとって、早い時期から「金融リテラシー」を磨くことはとても重要になります。
資産運用や資産形成を着実に進めることで、医師としてのキャリアとともに、女性としてのライフプランにおいても選択肢が広がり、より充実した幸福な人生を送れる可能性が高まるのです。
現在、多くの医師は専門医の資格を取得して、各診療科のエキスパートとしてのキャリアを歩み始めるのはおおむね30代前半から半ばになります。30代というと女性にとってはちょうど、結婚や出産・子育てのタイミングです。
そのため、女性医師にとっては30代が自分のキャリアとライフプランの方向性を見定める重要な時期といえるでしょう。
しかし、この時期の女性医師は多忙を極めています。勤務医であれば毎日臨床の現場に立ち、手術を行い、入院患者を管理し、定期的な当直や夜間のオンコールもあります。そのうえ、プライベートでは結婚や出産・育児が重なると、オーバーワークにならないほうがおかしいくらいです。
そのため30代で医師としてのキャリアをいったん中断する女性医師も少なくありません。
そもそも、お金のことや資産運用、資産形成について、これまであまり考えたことがなかったという医師は男性、女性含めてたくさんいます。確かに医師は社会的なステータスが高く所得も多いでしょう。
しかし、万が一、病気やケガなどで現場に立てなくなると、収入は大きく減少してしまいます。
だからこそ一日でも早く「自分の将来とお金の関係」について考え始めてほしいのです。一度にすべて理解したり、見通しが立つということは難しいでしょうが、今日から始めれば必ず前へ進むことができ、明るい未来が見えてくるはずです。
ローリスクでお金が増える「資産形成」の最適解は?
資産運用の方法として、最も簡単で安全な方法は銀行にお金を預けておく「預金」です。ただし、ご存じのように預金では残念ながら利息がほとんど付きません。
一方で「投資」には、さまざまな運用対象があります。代表的なのは「株式」でしょう。上場している株式会社の株を購入することで、利息に当たる配当を得たり、買ったときより値上がりした段階で売却することで譲渡益を得ることができます。インフレに強いのも株式の大きなメリットです。
ただし、株の配当や譲渡益は会社の業績や経済状況で大きく変動します。大儲けできるかもしれませんが、大損することもあり得るのです。また、会社の業績などをチェックしたり、経済や株式市場の動きを見たりしながら、株(銘柄)を選び、購入や売却のタイミングを判断することが必要です。多忙な医師とっては、これらをこなすのは難しいでしょう。
複数の株式(銘柄)をパッケージした「投資信託」という金融商品もあります。少額から多くの銘柄に分散投資できるのが特徴で、日経平均などに連動するパッシブ型と呼ばれる投資信託であれば銘柄を選ぶ必要もありません。また、商品によってはNISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)といった税制優遇制度の対象になるものもあります。
ただ、投資信託も基本的には株式へ投資するものなので、経済や株式市場の動きに左右されます。少額から始められるのはメリットですが、まとまったキャッシュフロー(運用益)を得るには多額の自己資金が必要です。
ほかにも、投資対象としてはFX(外国為替証拠金取引)や商品先物、暗号資産(仮想通貨)などもありますが、これらは株式と同じか、それ以上に値動きが大きく、投資というよりは投機に近くなり、安定した資産運用の方法としては適しません。
そこで考えていただきたいのが「不動産投資」です。
不動産投資とは、不動産を購入し、それを他人に貸すことで毎月の家賃収入を得ることを目的とした投資です。さらには将来購入した不動産を売却することで、売却益を得ることも可能です。そのため、不動産投資であれば銀行に預けるよりも大きく資産を増やせる可能性が高く、さらには株式のような手間は掛からずローリスクで資産を運用することができます。
女性医師に不動産投資が最適といえる、これだけの理由
私たちが、医師、とりわけ女性医師に最も適した投資対象としてお勧めしているのが、マンションやアパートといった賃貸用不動産です。そこには5つの理由があります。順に説明しましょう。
①基本的に“ほったらかし”でいい
購入した賃貸用不動産は、主に個人に対して居住用として貸します。契約は一般に2年ですが、更新も可能になっていて、毎月、家賃が入ってきます。
入居者の募集や家賃の集金、賃借人(借りている人)からの問い合わせ等については、専門の不動産会社に任せておけば、所有者(オーナー)としてはほとんど手間が掛かりません。いわば、〝ほったらかし〟でいいのです。忙しい女性医師にとって、これは大きなメリットです。
②銀行融資を利用しやすい
マンションやアパートなどの賃貸用不動産の価格は物件によってさまざまですが、最低でも1000万円、規模の大きなものになると数億円します。それを購入するお金を全額、自分で用意できる人はごくまれであり、通常は銀行融資を組み合わせます。例えば、1億円の賃貸用不動産を購入するに当たり、自己資金は500万円、残り9500万円を銀行からのローン(融資)でまかなうのです。「そんなことができるの?」と思われるかもしれませんが、銀行にとって賃貸用不動産への融資は、土地建物を担保に取ることができ、しかも毎月の賃料から元金と利息を返済してもらえるため、焦げ付きの少ない案件とされます。
そして、医師のように安定した高収入が見込める職業の人には、一般の会社員や公務員以上に融資額など有利な条件で貸してくれるのです。例えば、一般の会社員や公務員であれば年収の10倍が融資上限といわれますが、医師の場合は年収の20倍前後が融資上限といわれています。
さらにいうと、多くの職業では産休・育休中や正規雇用ではないアルバイト、パートでは、賃貸用不動産の購入に当たって銀行から融資を受けることは非常に困難です。ところが、医師であれば産休・育休中であっても、アルバイトやパートであっても、安定した収入が得られることが証明できれば、比較的容易に融資が認められる傾向にあるのです。これは女性医師にとって大きなメリットといえるでしょう。
③高い節税効果が見込める
賃貸用不動産を購入し、個人などに貸すと、毎月、家賃が入ってきます。こうした収入は不動産所得として毎年、税務署に確定申告する必要があります。
ただ、不動産所得の計算では、家賃等の収入から管理費や銀行融資の利息分、そして建物の「減価償却費」を経費として差し引けます。そして、不動産所得が赤字になると、他の給与所得等と損益通算することができ、特に本業での収入の多い医師の方たちにとっては、所得税や住民税の負担が減ります。
ちなみに、所得税は超過累進税率といって、課税所得の額によって段階的に適用税率がアップします。例えば、課税所得のうち695万円超900万円未満の部分の税率は23%ですが、課税所得のうち900万円超1800万円未満の部分の税率は33%になり、10%も跳ね上がるのです【図表】。このように、不動産所得の赤字による損益通算の効果は、給与所得や事業所得が高い人のほうが有利であり、医師はまさにそのメリットを享受しやすいといえます。
④生命保険代わりになる
賃貸用不動産を購入するために銀行融資を受ける場合、団体信用生命保険への加入がセットになっています。団体信用生命保険とは、融資の返済中に借りた人に万が一のことがあれば、その時点での残りの元金(融資残高)に見合う金額の生命保険金が支払われるという保険です。そのため、残された親族の手元には、ローンの返済が必要のない賃貸用不動産が残り、家賃収入の大半を受け取り続けることができます。
こうしたことから、銀行融資を利用して不動産投資を行うに当たって、すでに加入している生命保険を見直す医師の方も少なくありません。
⑤相続税対策に利用できる
ある程度の年齢になり、それなりの資産をもっている人の場合、相続税の負担が気になってきます。
相続税は、亡くなった人(被相続人)が所有していた資産に課税されるものですが、相続税額の計算において、土地や建物など不動産は通常、市場での時価に比べてかなり低く評価されます。おおざっぱな目安として、土地は時価の7割、建物は5割などといわれます。賃貸用不動産はさらに、第三者に貸していることで権利が制限されていることから、マイホームなどの自己利用より評価額が下がります。
一方、賃貸用不動産を購入する際に受けた銀行融資は、その元金の残高が土地や建物の相続税評価額から差し引かれます。結果的に、相続税の計算において、銀行融資を利用して購入した賃貸用不動産は、マイナスの評価になったりするのです。
このマイナス分は他の資産の評価と相殺されるので、相続資産全体の評価額が下がり、相続税の負担を抑えることが可能になります。開業してクリニックを経営したりして、多くの資産を築いた医師にとっては、相続税対策になるという点で、賃貸用不動産は大きな魅力があるでしょう。
大山 一也
トライブホールディングス 代表取締役社長
植田 幸
資産コンサルタント、宅地建物取引士、AFP(日本FP協力認定)
【関連記事】
■税務調査官「出身はどちらですか?」の真意…税務調査で“やり手の調査官”が聞いてくる「3つの質問」【税理士が解説】
■月22万円もらえるはずが…65歳・元会社員夫婦「年金ルール」知らず、想定外の年金減額「何かの間違いでは?」
■「もはや無法地帯」2億円・港区の超高級タワマンで起きている異変…世帯年収2000万円の男性が〈豊洲タワマンからの転居〉を大後悔するワケ
■「NISAで1,300万円消えた…。」銀行員のアドバイスで、退職金運用を始めた“年金25万円の60代夫婦”…年金に上乗せでゆとりの老後のはずが、一転、破産危機【FPが解説】
■「銀行員の助言どおり、祖母から年100万円ずつ生前贈与を受けました」→税務調査官「これは贈与になりません」…否認されないための4つのポイント【税理士が解説】