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借主が連絡なく不在1ヵ月半…家財処分は「違法」?
【アパートオーナーからの質問】
独身の中年男性(生活保護を受給されています)に貸している部屋があり、3ヵ月後に更新が迫っていたので、管理会社から更新の案内のハガキを送りました。しかし、何も返答がなく、再度案内を出しましたが、やはり返答がありませんでした。
登録していた電話番号にかけたところ、別人の女性が出てきたり、部屋に直接行ってノックをしたものの、全く反応がありませんでした。しかも、ドアに鍵はかかっておらず、部屋の中に入ってみたところ、ビニール袋等のゴミが山積みになって足の踏み場もない状態で、異臭が漂っていました。
その後も、賃借人が部屋に戻ってくる様子もなく一月半ほど不在が続きました。
契約書には「賃借人の無断不在1ヵ月以上に及ぶ時は敷金の有無にかかわらず、本契約は当然解除され、室内の家財等も売却処分できる」との約定がありましたので、そこで、管理会社と相談し、室内の家財等の荷物を撤去し、鍵も交換しました。
そうしたところ、その3日後くらいに、突然賃借人から連絡があり「鍵が変わっていて部屋に入れない。」と言ってきました。また、勝手に家財を処分したことなどについて、損害賠償として400万円を支払え、という請求を受けています。
なお、賃借人は、アルコール依存症で長期間病院に入院していたために不在だった、ということが後で判明しています。
我々がしたことは、違法と判断されてしまうのでしょうか。
【説明】
本件は、東京地裁平成22年10月15日判決の事例をモチーフにしたものです。
本件のように、突然所在不明となってしまった賃借人について、賃貸人が裁判の手続を経ずに荷物の処分や鍵の交換等の明渡行為を行うことは、法的に「自力救済」と言われます。
この自力救済は原則として禁止すべき、というのが法律の考え方であり、例外的にこの自力救済が許されるのは
というのが最高裁の考え方(最三小判昭和40年12月7日判決)です。
したがって、仮に賃貸借契約に「賃借人の無断不在1か月以上に及ぶ時は敷金の有無にかかわらず、本契約は当然解除され、室内の家財等も売却処分できる」というような条項があるからといって、自力救済が直ちに適法となるものではありません。
本件の事例において、裁判所は、賃貸人側(実際に被告とされたのは賃貸人からの依頼を受けて鍵の交換や家財の処分をした管理会社でした)の自力救済行為は、違法であると判断し、管理会社には損害賠償として110万円(家財の損害、慰謝料、弁護士費用)の支払を命じています。
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