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連載「精神科医が語る」医療現場の現実【第9回】

「29歳で医学部入学」不登校・高校中退…“レールをはずれた”彼が、医師を目指したワケ【精神科医が解説】

精神科医精神疾患

「29歳で医学部入学」不登校・高校中退…“レールをはずれた”彼が、医師を目指したワケ【精神科医が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

年々増加傾向にある、精神疾患患者数。医療法人瑞枝会クリニック院長・精神科医の小椋哲氏は、自身もメンタルの問題による不登校、高校中退といった経験を経て29歳で医学部に入学しました。同氏が幼少期から大学入学を振り返りつつ、経験があるからこそわかる「精神医療に求められるもの」について解説していきます。

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29歳で医学部に入った医師の「PSM」だった幼少期

私が医師を志して医学部に入学したのは、29歳のときです。といっても、何年も大学浪人を繰り返していたわけではありません。

 

中学時代に不登校になり、高校を中退して家を飛び出したという経緯があったので、むしろ大学進学という道は眼中にありませんでした。19歳で親の庇護を離れてなんとか自活を始め、20代のほとんどを医療とは直接関係のない世界に身を置いていたのです。

 

結果的にずいぶんと回り道をしましたが、それは私自身がPSM(※)であり、多数派の人たちが選択するであろう一般的な進路を歩めなかったことに起因しています。

 

※ PSM…サイコソマティック・マイノリティ。すべての精神疾患は、正常と異常の二元論ではなくあくまで「特定の状況下での心身の反応が少数派であるだけ」とする考え方。

 

小学校の2年から4年までは父親の留学先のアメリカで過ごし、帰国して鳥取県に戻って以降は、地元の小学校に通いました。

 

友達と外遊びをしているときに空に浮かぶ昼間の月が目に入ったりすると、「空に見えている天体と今自分が立っている天体の、どちらが月でどちらが地球なのだろうか」と真剣に考え始めるような子どもで、幼い頃から独特の精神世界のなかを生きてきたように思います。

 

表面的にはなんの問題もない子どもに見えたでしょうが、内心では現実社会になじめていないような違和感をもち続けていました。

 

中学に進学すると、水泳部に入りました。新しい友達もできて、テストでも常にトップクラスの優等生でした。しかし、私のなかでは小学生時代に感じ始めていた違和感が、どんどん増幅して渦巻いていくような感覚を覚えていました。

 

中学2年になった頃、このまま高校、大学と進学して、どこかの会社に就職して、みんなと同じようなスーツを着て丸の内などにある企業に通う自分を想像したときに、とてつもない嫌悪感に襲われました。こんな社会はおかしい、大人は何か大事なことを隠しているのではないか、自分はこのままレールに乗るべきではないと考えるようになり、そこから不登校が始まりました。

 

当時の自分にとっては学校に行くことこそが社会が敷いたレールに乗ることを象徴する行動であり、まずはそこから降りる必要があると考えたのです。

医療法人瑞枝会クリニック 院長 精神科医

1968年生まれ、鳥取県出身。
2005年熊本大学医学部医学科を卒業後、2007年東京大学医学部附属病院精神神経科に入局。
東京都立松沢病院、東京大学医学部附属病院(助教)、宇治おうばく病院などの勤務を経て、2015年瑞枝カウンセリングオフィスを開所。
瑞枝カウンセリングオフィスでの心理サービスを、精神科保険医療のなかでも展開するため、予約診療を自在に組み合わせた「瑞枝会モデル」を構築。
その実践の場として、2016年瑞枝クリニックを開業し、2018年医療法人瑞枝会クリニックに改組。
小学生時代に米国現地学校へ通い人種差別を経験。
中学では不登校となり児童精神科を受診、高校では精神的危機に陥り中退するなど、精神科ユーザーとしての苦しみに共感できる素地がある。

著者紹介

連載「精神科医が語る」医療現場の現実

※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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