(※写真はイメージです/PIXTA)

精神疾患には、正常と異常を明確に分けるボーダーラインのようなものはない、と医療法人瑞枝会クリニック・院長の小椋哲氏は考えます。疾患に対してレッテルを貼らずに、特定の状況下での心身の反応が「少数派」であるだけなのだと理解することが、療養や社会生活においては不可欠です。

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日本の社会、企業「障害への理解が進んでいない」現状

PSM(※)の考え方は、雇用の面でも活かせると考えます。

 

※ PSM…サイコソマティック・マイノリティ。筆者が提唱する、「すべての精神疾患は、正常と異常の二元論ではなくあくまで『特定の状況下での心身の反応が“少数派”であるだけ』」とする考え方。

 

現状は、企業や自治体、官公庁にはそれぞれ障害者の法定雇用率が定められています。これは身体障害者と知的障害者に加え、精神障害者も対象になっています。これは障害の有無に関係なく、誰もがその能力や意欲に応じた社会参加ができる社会の実現などを目指した制度ですが、現実には残念な状況が起こっているケースが多くあります。

 

精神障害に限らず、すべての障害者は特定の機能や特定の状況下での心身の反応が少数派であるだけです。このため、少数派の人たちが苦手な分野や環境下で仕事をしなくて済むように配慮すれば、ほとんどは多数派の人と同様にその能力を発揮して社会や組織に貢献できます。

 

しかし、日本の社会、企業ではこうした理解が進んでいないため、少数派の人たちをわざわざ苦手な環境に置いてしまったり、苦手な仕事をさせてしまったりするケースは多く見られます。

 

あるいは、どんな配慮をすればよいかが分からないために腫物をさわるような対応になってしまい、その結果、ごく簡単な仕事を少しだけやってもらうだけ、というケースもよく見られます。

 

本当は、少数派の人たちはもっと活躍できるし、貢献できるのに、それを活かす場が与えられていないのです。

 

最近では、多くの企業や組織などで、ダイバーシティ(多様性)&インクルージョン(包含)の考え方を重視する動きが拡大しています。

 

例えば、「日本人の中高年男性だけ」という同質性の高い組織より、いろいろな属性の人がいる組織のほうが多様なアイデアが出やすいでしょうし、透明性の高いコミュニケーションが必要になるので不祥事も減ります。

 

属性やバックグラウンド、環境の違いをもつ人たちがお互いの違いを受け入れて、それぞれが活躍できる体制を整えることで、誰もが気持ち良く働けますし、生産性も向上します。

 

ダイバーシティの考え方は、主に女性や外国人、LGBTQの人たちに向けられることが多いようですが、PSMの人たちに対しても同様の考え方が拡大してほしいと思います。

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※本連載は、小椋哲氏の著書『医師を疲弊させない!精神医療革命』(幻冬舎MC)より一部を抜粋・再編集したものです。

医師を疲弊させない!精神医療革命

医師を疲弊させない!精神医療革命

小椋 哲

幻冬舎メディアコンサルティング

現在の精神医療は効率重視で、回転率を上げるために、5分程度の診療を行っている医師が多くいます。 一方で、高い志をもって最適な診療を実現しようとする医師は、診療報酬が追加できない“サービス診療"を行っています。 こ…

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